第3話
千引きくじとトランク
次の日の朝
いつも通り朝のお勤めを終えた後、宝物庫に向かった。
宝物庫の床の組木パズルを解くと上からハシゴが降りてくる。
そのハシゴを上り、2階の真ん中に大きな木箱があり、箱の上部に穴が空いていてそこから50本程の縄が束ねたものが出ていた。
スヴァルは落ち着いて1本の縄を引く、ハズレだ。
ウル山廃吟醸だった。
このウルスス山から湧く水とその水で作ったお米で造られたお酒だ。
その後10回程くじを引いてハズレを次々とデイパックに仕舞っていく
フッと、息をついてもう一本紐を引いた。
サメのぬいぐるみが釣れた。
そのぬいぐるみの口の中に手を突っ込み鍵を取り出した。
1階の組木のパズルを外して出てきた鍵穴に先程の鍵を差し込んだ。
宝物庫からゴロゴロカラカラと音が鳴り出した。
ガコリとハマる音がするとピタリと音が止みガタンガタンと上からハシゴが降りてきた音がした。
2階に上がって降りてきたハシゴを使って3階に登った。
屋根の高い位置にある明り取りからの光しかなく3階は薄暗い。
部屋の中央に鈍く光る木彫り熊の置物がある。
そこに一歩近寄ると青い魔石とスヴァルの耳飾りが共鳴し光り出した。
熊の口に咥えられた鮭の目に嵌め込まれた魔石が、勢いよく飛び出してズヴァルの耳飾りに嵌った。
家に戻り白い大きめのパーカーに着替え、着替え1式とへそくりをデイパックに詰め込み、家を一歩出る。
そこに母とユズリハが立っていた。
「姉様、お帰りをお待ちもうしんす」
スヴァルはユズリハの髪を撫でる。
「行ってきます、いい子にしてるのよ、父様と母様をよろしくお願いしますね」
ユズリハがコクリと頷くと、ポロリと涙を流した。
「母様、父様とイチ兄はどちらにいらっしゃるのですか?」
「お父さんとイチくんは朝早くに家を発って民と新しい島に向かいました。
私とユズリハもこの後ここを発ちます。
スヴァル、母が昔旅をしていた頃に使った魔法のカバンです、沢山の物を持ち歩くことができますし、中に入れたものが悪くならないのよ。コレを使いなさい。
新しい島であなたの帰りを待っていますよ。
あっ後、おにぎりを入れておきましたからね」
母が皮のトランクをにを渡してきた。
「母様、トランクだと手を塞いでしまいますので、ちょっと」
顔を伏せがちに母親を見た。
「まぁ」と母は頬に手を当てて、眉尻を下げた。
母がポンと手を打った。
「ちょっと貸してちょうだい」
母がトランクに付いていた4つのⅮカンにベルトを通して背負える様にして渡した。
「はい、これで大丈夫」
ーーダサい。いやだなぁ。
ニコニコと微笑む母からイヤイヤ受け取って顔を背け肩をがっくりと落とした。
イヤイヤデイパックの物をトランクに移す。
スヴァルの様子を見てクスリと微笑んで母はスヴァルの肩にトランクをかけて、バシンとトランクを叩いた。
母がニッコリと微笑んだ。
「頑張りなさい」
母がスヴァルを抱きしめて、頭を撫でた。
母とユズリハは、心配そうに見送った。
空は町の燃やされた煙で灰色におおわれている。
長い階段を降り一番下まで着くと焦げた臭いが漂ってきた。
悲しそうにオッソの街の方角をチラリと見て、街とは反対の方に向かって一歩踏み出した。
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