幼馴染から逃げたら、金髪少女と出会った。

らかもち

第1話

「...つ、付き合ってください!」


「...こちらこそ、よろしくお願いします」


少女は涙をこぼして、喜びをあらわにした。


「...っやったぁあーーーー!」


どうやら告白は成功したらしい。

もちらん、告白されたのは僕ではない。


「...はぁ」


彼氏彼女の関係。

正直に言って興味はある。高校生の男子ならなおさらだろう。

羨ましいし、妬みもする。

しかしながら、僕にはもう好きな相手がいるのだ!


「...そんなにため息ばっかりついてると幸せが逃げちゃうわよ?」

こいつは僕の幼馴染の美鈴みすずだ。


「...余計なお世話」


「...っあ、ふーん、なるほどねぇ」


美鈴は1組のカップルの誕生を見た後、こちらに振り向く。


「あんな風に、素敵な彼女さんが欲しいのかな?」


にやにやしながら小バカにした様子でこちらを見つめてくる。

こういう風な時だけ察しがいいんだよなぁ。


かける、うじうじしてたら、いつまでたっても彼女できないよ~?」


いつもこんな風に僕をいじってくる。これがいつものパターン。

何回もいじられているし、ここらへんで止めさせるか。


「もしよかったら、私がなって―」


「いや、僕には心に決めた人がいるんだ!」


しばしの静寂。


「...え?」


「昔、一緒に遠くに山に出かけたことがあっただろ?」


「...うん。」


「あの時、僕だけはぐれてしまって、遭難してしまっただろ?」


「怪我もして、誰も助けが来なくて…。そんな時に、ある人が現れたんだ。」


******


あれ?みんなどこに行っちゃったの?


いない。

いない。

もう、歩き疲れた。


『おやおや?こんなところに迷いこむとは珍しいの?大丈夫かい?坊や。』


声のした方へ振り返ってみると、

そこには金髪のとっても綺麗なお姉さんがいた。

僕は必死になって、


『...っお願いします!なんでもするから…。僕を助けてください…』


『おっと?なんでもしてよいのかの?』


『...っはい!なんでもするので、僕を家族のところへ連れてってほしいです!』


『......ほう。そこまでいうのならば助けてやろうかの?ただし、一つ条件がある。』


『...条...件?』


『その条件とは―』


*****


「何はともあれ、その人のおかげで助かったってわけさ。だから、その人がめっちゃ好きになっちゃってさ。今は恋愛とか考えられないんだよ」

実際には、もうその人の顔をほとんど覚えていないんだけれど、うまく乗り切れるか?


「...えない。」


あれ?なんだか美鈴の様子がおかしい。

徐々に瞳孔が開いていき、体もふらふらと…。


「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない。」


...!?


「翔のそばにいていいのはこの私だけ。ほかの女は一緒にいちゃダメ。翔に近づかないよう、私はいつもそばにいたし、釘を刺していた。どこで間違えた?あの時しくじったのか?...でも、そんなことは関係ない。」


「翔?ずっと一緒にいよ?」

彼女の手にはナイフが握られていた。


脳の処理が追い付かない。

美鈴はナイフを持ってる。それで僕を脅すつもりか?

いや、この様子だとその先のことも行いかねない。

確実にヤンデレだ。


とりあえず、ここは逃げるの一手だ。

僕は美鈴に返事もせず、一目散に逃げた。


逃げた。逃げた。超逃げた。


30分くらい経っただろうか。

さすがにもう追いかけてきてないようだ。

あたりに目をやる。


あれ?ここはどこだ?

なんだか、昔見たことがあるような―


僕の意識はここで途切れた。


*****


ずっと眠っていたような気がする。


「...ここはどこだ…?」


目の前には、でっかい十字架のやつがあり、赤いカーペットが続いている。

どうやらここは教会のようだ。


少し歩き回ってみると、置き時計があった。

その針は、1を指していた。


「って、もう真夜中だ!早く帰んなきゃ。」


「でも、どうやって…?」


自分がどこにいるかわからない。

わかるのは、ここが教会だということ。

僕の住んでいる地域には、教会なんて存在していなかった。


そんな風に考えていると、甘美な声が聞こえてきた。


「お困りのようじゃの?坊や?」


声のした方へ振り返ってみる。そこには、小さなころに見た瓜二つの女性が立っていた。


なぜ瓜二つかというと、昔見た女性は歯がこんなに長くなかった。

また、身長がこれより小さく、もうちょい細かっただろうか。


「...あなたは誰ですか…?」


「...ほう。もう忘れてしまったのか?わしは、お前を助けたのじゃぞ?」


「たしかに、僕はあなたにそっくりな人に助けられました」


「そうじゃろ?」


「しかし、身長がもうちょい小さく、細かったと思うんですが?」


そういうと、彼女は自分の体を見てから言った。


「なるほど。確かに今のわしじゃ、無理もないか」


困惑する僕を見つめながら、こちらへ近づいてくる。


「そんなことはどうでもいいのじゃ。」


女性は僕に抱き着いてきた。


ちょっと力を入れたら壊れてしまいそう―って


「ち、ちょっと、何してるんですか!?」


「何って、これから君と結んだ契約を遂行するだけじゃが?」


「契約?」


「...はぁ、それも忘れておるのか?流石にへこむぞ?」


契約ってなんだ…? 


「...とりあえず、離してください」

今のままじゃ恥ずかしくて、おかしくなりそうだ…。


「まぁ、よい。とりあえず契約を果たしたら、すべて思いだすじゃろ」


「契約って何なんですか?とりあえず、離れて、離れ…?」


離れない。

僕もだいぶ力を込めているのだが、いっこうに離れそうにない。

どこにこんな力があるんだ?


「それでは、始めるぞ。」


その瞬間、僕の首筋に彼女の鋭い歯が刺さって。

僕は、また意識を失った。


*****


――『その条件とは、わしの配偶者になることじゃ。』


『はい...ぐうしゃ?』


『おっと、なんていえばよいかな?...まぁ要するにずーーっとわしと一緒にいるということじゃ。』


『...ずっと、いっしょ?』


『そうじゃ、まぁちょっとばかし特殊じゃが。悪いようにはせぬぞ?』


『......わかった。ぼく、そのはいぐうしゃってやつになるから―


『本当にいいのか?まぁ保険もかけておこうかの。わしのことをずっと覚えていて、独り身だった場合、わしが10年後迎えに行こう。』


*****


… すべて思い出した。

今日が、その誓いをしてから10年か。

ずっと忘れていたんだな。


「起きたかの?旦那さま?」


そういって、彼女は僕に声をかけ、鏡を差し出してきた。


「鏡?」


「まぁ、いいから顔を見てみろ」


「…」


鏡をのぞいてみると、そこには歯が長くなった僕。

髪の毛が白くなり、少しばかし身長も伸びている気がする。


っていうか、彼女の身長、元に戻ってないか?

彼女は、僕が昔見た女性になっていた。


「何が起こったの?」


「旦那様は、人間をやめたのだ。」


「...え?」


「わしと契約を遂行したことで、旦那様は吸血鬼になったのじゃ!」

テンションが上がっている模様。


「僕が...吸血鬼?」


「しかし、実際にいうと血を吸うこともなく、光にやられて灰になるわけでもない。要は、わしと旦那様でいいとこどりをして、新たな生命に生まれ変わったのじゃ。」


…?


「まぁ、吸血鬼もどきというものかの。」


とりあえず、日常生活は送れるみたいだ…。良かった~。

ってえ?


「ってことは、僕はちょっとばかし進化して、お嫁さんを手に入れたってこと?」


「そうじゃ!それで間違ってないぞ!」


ニコニコとほほ笑む彼女。


ちょっと待って。

ロリ金髪吸血鬼(もどき)とかいう、美少女をお嫁さんに…?


困惑してる僕を見て、斜めに首を傾げ不思議そうな顔をしている。


やばい、直視できん。かわいすぎる。


でも、ちょっと待てよ。


「僕たち、お互いの名前すら知らないじゃない?」


ッゾク 

おかしい。なんだか嫌な予感がするぞ…。


「旦那様の名前は翔じゃろ?知っておるわそんなこと」


......僕の名前、言ったっけ?


「…なんで知っているの…?」


「そりゃあ、わしがずっと見ていたからに決まっておるじゃろう。」


え?


「旦那様がどんなことが好きで、何をしていたか。どんな生活をしてどんな考えを持っているか。なんでも知っておる!」


「ちなみに、わしの名前はユーフェミアじゃ!」


かわいい。確かに、かわいいのだが問題は別にある。

目の瞳孔が開いてきている。言葉と行動が一致していない。


ユーフェミアが抱き着いてきた。

僕の理性が飛びそうになっていると、彼女が耳元でこう囁く。


「わし以外の女と接触したら、?」


一瞬で正気に戻った。


「まぁ、なんてな?冗談じゃ、冗談。」


...あのぉ…?そんな瞳孔開ききったままで言われても説得力ないんですが?



分かりました。もう抵抗しません。このまま幸せに暮らします。


しかし、何か忘れているような…。


******

「翔、どこ行っちゃったの…?」

少女が覚束ない足取りで、歩いている。


金髪少女と少年が歩いてる姿を目撃する。


「あはっ、みーつけた。」


二人の少女が衝突するのは、また別の話。








******

読んでいただき、ありがとうございます!

KAC2022 3作目でした!


3作目なんですが、1,2とどれも同じのようなお話になってしまいましたね…。

次回のお題は、ヤンデレから逃げたいと思います!


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幼馴染から逃げたら、金髪少女と出会った。 らかもち @Karamochi

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