ギルドに憧れた俺がバカでした。でも冒険者にはァッ……！？アハハァァァンッ！……ウッ……ナ、なりだいッ！

第8話 レット、本気を出す

　俺はサッと、オムレツにナイフで切れ目を入れた。

　するとそこからオムレツは裂け、中からとろフワなスクランブルエッグ状の卵とチーズが溢れ出す。

　それを見たラァムは目をキラキラと輝かせ、頬を紅潮させた。

　そして呟く。

「綺麗……。こんなオムレツ、初めて見ました……」

「俺の婆ちゃん直伝、たんぽぽオムライスだ！　召し上がれ！」

「なんだか食べるのがもったいないです……」

「食べないのはもっともったいないから、ほら、卵に余熱で火が回らない内に食べてみてよ！」

「はい……」

　レットがフォークを渡すとラァムはオムレツを一掬いし、それをおもむろに口へ運んだ。

　その瞬間目の輝きが先程以上に増し、初めてその表情が変わる。

「……おいしい」

「へへっ！　料理は得意なんだ！」

「これは……一流料理人レベルです」

「そこまで！？」

「だから冒険者は諦めましょう」

「そっちが本音か！？　お前が褒めるなんておかしいと思ったんだよ！」

「でも……本当においしいです……」

　そう本気のトーンと幸せそうな顔で言われ、俺は少なからず動揺した。

「あ、ありがとう……」

「これ以上食べるのがもったいないくらいです」

　この後ラァムはあっという間にオムレツを平らげる。

「……ごちそうさまでした。とてもおいしかったです」

「おうっ！」

「道草も食べてみるものですね。ヤギの気持ちがわかりました」

「いや普通に人間も食べられる野草だから！？」

　クエストへ向かう時と大きく違い、帰りは料理により二人ともすっかり打ち解けていた。

　でも……と、俺は思う。

　せっかく仲良くなったけど、帰ったらこのパーティも解消されるんだよな。

　遠くに見えていた王都エナスカの城門が徐々に近付いてくるにつれ、憂鬱な気分になっていく。

　そんな風に感傷に浸っているところへ、場違いな声が掛けられた。

「どこ行くんだぁい？　新人冒険者くぅん？」