第6話 クエスト成功!?

 王都エナスカの外れの雑木林に囲まれた街道沿いの牧場。

 その主が今回のクエストの依頼者だ。

 俺とラァムの二人は牧場にて、討伐モンスターであるちょい強めのスライム一体と戦闘を開始していた。

「たっ、たしゅけ――!? ひゅっ!? コヒューッ!――こっ、このままじゃッ! しっ、死ぬッ!? ヒィッ!?」

 四つん這いで動物のように芝生の上を駆け回り、不様に逃げ回る……俺。

 息も絶え絶えで本当に死にそうなその姿を、ラァムは冷めて目で見ていた。

「……なんでそんな必死感が出せるんですか。ちょっと強めのスライム相手に……。えっ、まさか本当に死にそうなんですか?」

「死ぬゥッ!?」

「迫真」

「見てないでたしゅけてっ!? ま、まじでこいつヤバイッ!?」

「ヤバイのはあなたの方なんですよね……まったく」

 辟易しながらもラァムはスライムに近寄ると――。

 パンッ! 

 蹴り一発。

 スライムの体は無惨にも炸裂四散。

 これにてクエストモンスターの討伐は果たされる。

 飛び散ったスライム片と涙と鼻水まみれの顔を歪ませ、俺は感謝した。

「あ……ありがとうっ! 君は命の恩人だよラァム!」

 無表情のままラァムは訊ねる。

「……それで、何か申し開きはありますか? 『ザコ』」

「ま、まあ感想は人それぞれだよね」

「誰が見ても同じ感想ですよ『ザコ』」

「ぐっ……!? なんも言えねェ……!」

「はぁ……。あなた、そんなに弱いのにどうして自信満々だったんですか……。ドラゴンを倒したなんて嘘までついて……。スライムに殺されるとか、笑い話として後世に謳い継がれるレベルですよ」

「あっるぇー? 前はもっとパワー出たんだけどなぁー? ドラゴン倒した時に力を出し切っちゃったからかなー? おっかしぃなー?」

「おかしいのはあなたの方です。それにさっきはドラゴンなんて一発と言っていたのに、いつの間にか力を出し切ったことに変わってますね」

「――鋭いっ!? こんなはずでは……」

「もういいです。依頼主に報告だけして、ギルドへ帰りましょう」

「……はい」

「その前にみっともないので、あなたのケガだけ治しておきましょうか。……ヒール」

 そう言ってラァムは薬草をこちらへ投げ付けた。

 ぺしっ!

「うっ!?」

 ヒールをかける価値も無いということだろう。

「……ありがとう」

 これでパーティも、そのまま解消になるんだろうな……。

 薬草を握り潰し、滲み出た薬液を患部に塗布しつつも俺はそんなことを考え、肩を落としながら依頼主の元へ向かうのだった。

 依頼主である牧場経営者の男はスライム討伐報告を聞くと、とても喜んだ。

「いやぁ、あいつらスライムは家畜は襲うし酸で芝生は傷めるし、本当に厄介だったから助かったよ! おたくらは若いから最初は不安だったが、さすがはギルドの冒険者だな!」

「それほどでも……」とレットが答えると、ラァムがボソリと依頼主には聞こえない程度の声量で呟く。

「あなたは本当にそれほどでもありませんしね」

「うっ……」

 依頼主は上機嫌で続けた。

「また厄介なスライムが出たら、おたくら二人をひいきにするようギルドへ頼んでおくからな! ありがとよ! 『いちゃつく二人』!」

「その名前で呼ばないで下さい!?」と、俺達は同時に反論する。

「えぇ……だが……」と、依頼主は困惑した。

 なぜなら――。

「それがおたくら二人のパーティ名だろ?」

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