京都攻略編③~京都府ギルドの面子~

 俺が盾を構えたら、それと同時に老人が俺へ手を向けてきた。


「撃て!!」


 老人の後ろからさらに人が前に出てくるので、撃たれる前に盾で攻撃を行う。


 殺さないように慎重に盾へ入れる力を調整するので、どうしても動きが少し遅くなる。

 俺へ銃を向けている人が戸惑いながらも、引き金を引く。


 乾いた音と同時に、カーンという金属が打ち鳴らされる音が聞こえる。

 パリィのために立ち止まってしまったため、集団のあらゆる方向から銃弾が発射されてきた。


(俺ならできる!!!!)


 すべての銃口が向けられている方向を読み、自分に当たりそうな弾のみを盾で防ぐ。

 数十秒経った時、銃声が聞こえなくなったため、俺へ向けて撃った全員を殺しにかかる。


「銃を撃っていいのは殺される覚悟がある奴だけだ!! 死なないことを祈れよ!!!!」


 俺は盾で武装した集団の蹂躙を始めた。


 銃の弾を補充しようとしている人の腕を折り、胴体を蹴り飛ばす。

 それを始めとして、俺を囲っていた集団全員を立てなくなるまで襲い続けた。


 最後に俺へ最初に話かけた老人が残っていたので、俺は足元に倒れる人を踏みつけながらまっすぐ歩き続ける。

 老人は俺が近づくと、腰を抜かしたようにその場へ崩れた。


 その反応を鼻で笑いながら、盾を突き付ける。


「バ、化け物!!」

「俺を倒したかったら、こんな集団じゃ無理ですよ。では、失礼します」



 人に対して失礼な人だなと思いながら老人を見続ける。

 老人は怖気づいたのか、声を出しながら立てない足でもがいて必死に俺から離れようとしていた。

 

「おじいさんは俺を打たなかったので助けてあげます」


 俺はのたうち回る老人を無視して、リュックへ盾を入れようとした。

 店に流れ弾が飛んでしまっているのが目に付く。


(ミスったか……)


 全部地面へ向けたつもりだったが、数発の銃弾がお店に当たってしまったようだった。

 謝罪のために、店の中へ向かって声をかける。


「お店の前ですみません。迷惑料を置いておきます」


 リュックの中から札束を数個取り出して、お店の入り口へ置いておく。

 俺がお店に謝っている最中に、銃を俺へ向ける気配を感じた。


 その方向へ向かって思いっきり盾を投げ付ける。

 そこには必死で俺から逃げようとしていた老人が発砲するために銃を構えていた。


(せっかく見逃してあげようとしたのに……)


 盾が手元に戻ってくるので、受け取りながら老人へ声をかけてからこの場所を離れることにした。


「もうあまり先がないのに死にたいんですか? 大人しくしていてください」


 老人は盾が当たって骨が折れたのか、左腕を押さえながらうなだれている。


 盾をリュックへ入れながら残党がいないことを確認して、京都の調査を再開しようとした。

 俺が店先から離れようとしていたときにいきなり近づいてくる気配がする。


「あの! ちょっとお時間いいですか!?」


 急にマイクのようなものを顔の前に差し出されていた。

 俺へマイクを向ける人がどこかで見たことがあるような気がしながら、回答をする。


「ここから離れれば大丈夫ですよ」

「では、あちらでお話を聞いてもよろしいですか?」


 20代後半と思われる女性が遠くにあるベンチを見ていたため、問題ないと判断した。


「あそこならいいですね」

「よろしくお願いします」


 俺はベンチまで歩き、座りながら対応をすることになった。

 女性は言葉を選んでいるのか、慎重に俺へ質問をしてくる。


「佐藤さんが京都へ来られた目的はなんですか?」

「観光です」

「か、観光ですか?」

「はい、魅力的な町なので見て回りたいと思っています」


 女性は俺の回答が予想外なのか、人が大量に倒れている店の方向を気にしつつも質問を続けてくる。


「えー……昨晩は【鬼】を倒したようですが、理由をお聞きできますか?」

「モンスターを倒すのに理由が必要なんですか?」

「つまり特に理由もなく倒したということですか?」

「俺の前にモンスターが現れたから倒したんです」

「えっと……」


 女性は言葉に詰まってしまい、次の質問がなかなか来ない。

 しばらく待っても、カメラを持った人や周りの人を見ていたので、終わりなのか聞いてみる。


「質問は終わりですか?」

「ちょっと待っていてください!」

「わかりました」


 女性が必死に俺を止めて、周りと相談を始めた。

 5分程経っても女性が戻ってこないので、もう待てないと思いベンチから立ち上がる。


「申し訳ないですが、俺にも予定があり、これ以上待てないので行ってもいいですか?」


 女性が驚くように俺へ顔を向けて、謝りながら駆け寄ってきた。


「最後に1つ質問をしてもいいですか?」

「どうぞ」


 女性は緊張をしているのか、喉がなるほど息を飲み込む。

 その後、真剣な表情を俺へ向けた。


「あそこで倒れている人たちについて一言お願いします」

「んー、俺1人を相手にしてあんなになるくらいなので、もっと鍛えた方がいいんじゃないんですか」

「あ、ありがとうございました」

「失礼します」


 俺は初のインタビューを終えた充実感を味わいながら女性から離れる。

 後ろでは、本気であれを言っていたらやばいなどと言う声が聞こえていた。


(やばい回答なんてあったかな?)


 自分の言葉を思い出しながら歩き続ける。

 特に気になる点がないので、気にしないことにした。

 後ろから救急車の来ている音が聞こえ始める。



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「俺1人を相手にしてあんなになるくらいなので、もっと鍛えた方がいいんじゃないんですか」


 スクリーンに今日の夕方に流れたニュースの一部が流されていた。

 この映像は、佐藤一也という人物がギルド長の用意した部隊を殲滅し、その後に語ったもののようだ。


 私はこの会議室の片隅に座り、話し合いの様子を眺めていた。

 ここには、ギルド長を始めとして、京都府冒険者ギルドの役員や一般の冒険者が集められている。


 ギルド長はスキルによる治療をせずに、折れた左腕をギプスで固める昔ながらの治療をしていた。

 

「佐藤一也をこのまま自由にさせてはいけないんだ!!」


 ギルド長が額の血管を浮かせながら叫んでいる。

 会場を見渡した後、私を見た。


「予言された通りなら、佐藤一也はこの京都を【壊滅】させる!!」


 その言葉を聞き、会場中が私へ目を向ける。

 私たち一族が【佐藤一也が京都を壊滅へ導く人物】と予言したせいだ。


 その事実をギルドへ伝えたところ、なんとしてもこの人物を確保しようとしている。

 私の前にある机には、佐藤一也の写真と使用した食器が並べられていた。


 これがあれば、私の家で代々継承されてきた【力】でこの人の居場所を知ることができる。

 地図を見ながら佐藤一也を常に監視していた。


 しかし、急に佐藤一也の行方が分からなくなる。

 私は何度も【力】を使用するものの、一向に判明しない。


「すみません、この人のいる場所が分からなくなりました……」


 私が真実を言った結果、会場がざわめき始める。

 血相を変えたギルド長が私へ詰め寄ってきた。


「巫女様! 本当にわからないのですか!?」

「すみません……」


 その後、私の両親や一族をまとめる祖母などが同じように【力】を使用するものの、誰も行方がわからない。

 横にいた祖母がこのようなことは今まで1度もないとつぶやいていた。


 私は最後に佐藤一也がいたと思われる嵐山付近をギルド長へ伝える。

 ギルド長はこの会場にいる人全員へ顔を向けた。


「このように、佐藤一也はこの方々の力を以ってしても得体のしれない存在である!」


 力強く机を叩いてから、血走らせた目で会場中を見る。

 折れているはずの左腕を振りながら全員へ指示を出した。


「なんとしても佐藤一也を確保せよ!! 発砲も許可する!! 抵抗するのなら殺してもよい!!!!」


 ギルド長の言葉で、会議室にいた人が一斉にここから出る。

 肩を上下に揺らしながらギルド長が私たちの近くへきた。


「みなさまも、佐藤一也の行方が分かり次第連絡をお願いします」


 ギルド長の鬼気迫る表情を見て、私はうなずくことしかできなかった。

 それと同時に、この佐藤一也という人物がどのような人なのか興味が出る。


(この人に会ってみたいな……)


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