富士山攻略編⑧~拳士覚醒~
俺は全力で走り、黒龍の背中に向かって飛び込む。
錬気で底上げされた能力とすべての推進力を右手に込めて、拳を振り下ろした。
「コギャアアアア!!??」
俺の拳が黒龍の鱗を打ち砕き、身をよじるように黒龍が俺から離れる。
地面に着地してから、俺の右拳が攻撃の反動で砕けてしまったので、ヒールで治す。
黒龍は俺を見すえたまま動かない。
拳を構えて、黒龍へ再度宣言を行う。
「さあ、殺し合おう!」
「ギャオオオオオオ!!!!」
黒龍が咆哮と共に角を光らせて、紫電を撒き散らした。
降りかかる紫電をパリィで振り払いながら、黒龍に向けて走り出す。
動くたびに、魔力で強化された体が悲鳴を上げるように痛みを生じている。
(これが体力と魔力を永続消費する理由か!!)
俺が踏み出した地面が後方へえぐれるように飛び散っていた。
錬気を行うことで、今まででは考えられないような力が出せるようになっている。
反応速度も上昇しており、黒龍から放たれる雷を見てから避けることができた。
「バーニングフィスト!!」
俺のすべてを練り込んだ炎を黒龍へ撃ち込む。
炎の塊が直撃すると、炎が弾けるように分散してしまう。
しかし、炎を受けた黒龍が一歩後ろへ後退する。
(効いている!? まさか、今までは弱くて無力化されたように感じていただけか!!)
少しでも威力が上がるようにさらに自分の体を巡る魔力を加速させた。
反動で俺の体の痛みが更に増すが、この後のことなんて俺の頭にはない。
(こいつを攻撃できる手段があるのなら、全力でやり続けてやる!!)
心臓が燃えるように激しく鼓動し、俺の体を満たす魔力を増加させる。
両手に魔力を込めて、【複合スキル】を使用した。
「マルチプルファイヤーアロー!!」
両手に充満した魔力が放たれて、900本の矢が黒龍へ撃ち出された。
ファイヤーアローを普通に行なった場合は、30本のみしか撃ち出されない。
弓熟練度を上げることで習得した【マルチプルショット】は、放つ【矢】を魔力でLv分本数増やすことができる。
俺は【炎の矢】をマルチプルショットで撃ち出すことで、片手から30×15本の矢を撃ち出す。
炎の矢が黒龍に当たり始めると、絶え間なく俺の手から放たれた攻撃が黒龍を襲う。
矢を受けている最中に、黒龍が矢を振り払うように翼を羽ばたかせて紫電で炎の矢を相殺してきた。
(まずはうっとうしいこの雷を止めなきゃだめだ!)
黒龍の攻撃や防御の起点である紫電をなんとかしなければ、俺はこいつに勝てない。
紫電がひたいの角が光ってから行われていることはすでにわかっている。
俺は角を折るために黒龍の体を駆け上がり始めた。
少しの突起があれば、それを足場にして黒龍の体を登ることができる。
突起物のある鱗が俺を自由に黒龍の体を走らせてくれていた。
角に近づき、へし折るべく全力で拳を振り下ろす。
俺の拳が角に当たった瞬間、濃い紫の雷に全身を押し返される。
「ックソ!!」
角自体に雷が圧縮されているのか、触れただけであふれ出てくる紫電で攻撃された。
空中に放り出され、黒龍が腕を俺へ振り下ろそうとしている。
振り下ろされる直前に角の位置を確認して、そこへ向かってテレポートを使用した。
黒龍の腕は目標を失って空を切り、俺は再び角を殴るべく拳へ魔力を込める。
拳が角に当たり、角を砕くことができた。
しかし、俺は強烈な雷によって地面に叩き付けられる。
倒れたまま黒龍へ顔を向けたら、黒龍が痛みで叫ぶように今までとは違う鳴き声を出し始めていた。
黒龍の角があった場所からは、天に向かって紫電が放たれ続けている。
紫電が止まると、黒龍が力尽きるように地面へ倒れた。
倒れた震動で地面が揺れるが、好機と感じて痛みを無視してすぐに立ち上がり、黒龍の全身を殴り始めた。
俺が拳を打ち付けるたびに黒龍の鱗が砕け散る。
(今やらないと俺が持たない!!)
魔力が少なくなり、自分の体が痛みで限界に近づいているのがわかる。
今勝負をつけないと俺は錬気を維持できそうにない。
死力を尽くし、殴り続けていたら黒龍が翼を羽ばたかせて立とうとしていた。
黒龍の上から拳を振り下ろし、残っているすべての魔力と体力を使用して炎の拳を打ち出す。
「これが俺の全てだ! バーニングフィスト!!」
地面から飛び立とうとしていた黒龍が炎の拳によって地面に衝突させることができた。
俺は体を動かすことができず、黒龍の近くへ落ちる。
(もう錬気ができない……魔力が切れたか……)
倒れながら黒龍を見たら、かすかに翼が揺らめいていた。
俺も立ち上がろうと手を動かそうとするが、激痛で動かすのも辛い。
歯を食いしばり、心を奮い立たせて痛みに耐えて立ち上がる。
黒龍は翼を揺り動かし、体を浮かそうとしていた。
(魔力が無くても最後まで戦い続けてやる)
黒龍は体を浮かす途中で自ら地面に落ちた。
足を動かそうとしても、言うことを聞かず黒龍に向かって進んでくれない。
その場を動けないので、俺は黒龍の動向を見守る。
すると、黒龍の体から黒い煙が出始めた。
(倒したのか……)
黒龍を倒したことで安心してしまい、俺はその場に崩れ落ちた。
もう、指一本も動かす力が残っていない。
(少し……休んでから帰ろう……)
俺は体を休めるために目を閉じて、回復を願う。
意識が無くなる直前、まぶたが白い光を感じたような気がした。
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