冒険者入門編④〜討伐クエスト終了〜
「これで終わりだ!」
俺は数羽のコカトリスが密集して突撃してきたので、剣を頭上から振り下ろす。
衝撃波と共にコカトリス達が地面に転がり、そのすきをついて止めを刺した。
今回のコカトリスを倒している最中に剣熟練度がLv10になっており、ブレイクアタックを覚えることができた。
スキルを覚えられたことが今日一番の収穫だと思う。
太田さんからこれ以上はバスにも積めないと言われたため、これで今日の狩りは終わりだ。
倒したコカトリスを太田さんへ持っていくと、すごい速さで解体をしていた。
太田さんは解体ナイフをコカトリスに走らせて、皮や肉を正確に切り分けている。
手伝おうとすると怒られるので、すごいなと思いながら黙って近くで眺めている。
30分ほどで最後に狩ってきたコカトリスの解体が終わり、リヤカーには山のようにコカトリスの素材が積み重なっていた。
へーっと見上げている俺へ、太田さんはバスに戻ろうと言ってくる。
そうですねと返しながら、俺は渓谷をでるために歩き始めた。
コカトリスをバスの収納庫へ入れた後、太田さんからすごい量のコカトリスのトサカを渡される。
「これはなんですか?」
俺が尋ねると、太田さんは少し笑いながら教えてくれる。
「それはコカトリスのトサカで、討伐数の確認みたいなもんだよ」
「トサカが……」
「モンスターごとにどこの部位を持ってくるか決まっているから確認しておきな」
「ありがとうございます」
狩を行っている最中から太田さんが急に優しくなった。
このトサカも言われなかったらわからなかっただろう。
太田さんは帰る前にどこかへ電話をしている。
電話が終わるのを待って、太田さんとバスに乗り込むと、運転手さんが俺を見て戸惑いながら出発していた。
帰りのバスの中では、来る時とは違い太田さんがよく話してくれる。
ギルドへ向かうバスの時間はあっというまに過ぎ去っていった。
太田さんはいろいろなことを話してくれた。
○
太田さんと清水さんは小学校時代からの同級生。
太田さんは冒険者学校、清水さんは支援学校の卒業生。
いつもは一緒に狩りへ行く人がいるが、今日は休んでいたこと。
太田さんの冒険者Rankは2。
○
バスの中で太田さんから冒険者のRankについて聞いた。
太田さんに詳しく教えてもらおうとしても、後でギルド長から聞くと思うから楽しみにしておくように言われた。
バスがギルドに着き、バスを降りてコカトリスを出そうとした時に、太田さんから荷下ろしはいいから先に清水さんのところへ行くようにうながされる。
「本当に手伝わないでいいんですか?」
「いーの、いーの。これも解体の仕事だから」
太田さんはコカトリスのトサカを清水さんへ必ず渡すように俺へ伝えてから、作業を始めた。
(太田さんはいい人だな)
今回の狩りで太田さんが態度は少し悪くても、性格が良いことがよくわかった。
ギルドに入って受付を確認したら、清水さんは笑顔で迎えてくれた。
「おかえりなさい!」
「今、帰りました。これをお願いします」
太田さんから言われたように、清水さんのいるカウンターの上にコカトリスのトサカの山を置く。
清水さんは何が置かれたのかわからなかったのか、山から1つトサカを手に取る。
手に取ってみたらなにか分かったようで、個数を数え始める。
「35個……で間違いないですか?」
「それくらいだと思います」
「くらいって……ちゃんと数えないとダメですよ」
俺の言葉に清水さんは注意をするように俺へ言ってくれた。
それと、清水さんが俺へ個数を伝えてから、妙に視線を感じた。
清水さんは帰ってきたことをギルド長のところへ伝えてくると言うので、カウンターで待っている。
すると、俺へ近づいてくる集団がいる。
6名程の男女が俺を囲むようにして、その中の1人から話しかけられた。
「これさ、君が全部取ってきたの?」
「ええ、そうですよ」
「ふーん」
それを聞いて集団は何かを話し始める。
俺はその様子を見ながら、前にも見たことがあると思い出す。
ゲームの中で、俺と一緒に狩りへ出かけたいと言う申し出はたくさんあった。
それこそ、毎日のようにモンスターを倒しに行きましょうと誘われた。
そういう誘いの大半が俺へ寄生するつもりの類だったため、うんざりしていた。
俺は自分の経験から、目の前の集団がそのようなやり取りを始めるのではないかと読み取ってしまう。
集団が話し終えたようで、その中の女性がこんなことを言い出した。
「今日の女よりも、私たちと狩りへ行った方がましよ」
俺の予想は当たり、案の定狩りのことを話し始める。
俺はどうやってこの集団を追い払おうか考え始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます