富士への樹海攻略編⑥~グリーンドラゴン討伐戦~(太田真央視点)
一也がグリーンドラゴンを地面に転がしてから、一也はしばらくの間グリーンドラゴンの巨体を確認するように棒と魔法で戦っていた。
(そもそも、樹海でグリーンドラゴンと戦っていることがおかしい)
グリーンドラゴンには普通の銃が効かないため、貫通弾を撃てるような大型の銃を用意する必要があり、この樹海にその銃を持ってくるのは難しい。
そのため、樹海でグリーンドラゴンに遭遇したら、対抗する手段がないため即帰還しなければ殺されてしまう。
俺は今でもそれが普通だと思っている。
しかし、目の前で戦っている一也は嬉しそうに戦いを挑んでいった。
(あいつは訳の分からない賭けをしてまでグリーンドラゴンと戦いたいんだよな……)
一也は何かを決めたのか、グリーンドラゴンへ向かって走り出す。
グリーンドラゴンは一也を迎え撃つように、尻尾を振り回し始めた。
一也が飛んで尻尾をかわしてから、グリーンドラゴンの足を棒で叩き始めている。
(俺はあんな風にグリーンドラゴンへ立ち向かえるだろうか……)
自分の体よりもはるかに大きなモンスターへ果敢に挑む一也はすごいと思う。
一也の攻撃を嫌がるように、グリーンドラゴンは後ろへ羽ばたいて距離を取ろうとしている。
一也はグリーンドラゴンが羽ばたいている最中に、棒をグリーンドラゴンへ向けた。
「ファイヤーアロー!」
一也が魔法を唱えると7本の矢がグリーンドラゴンの腹部へ突き刺さる。
魔法が当たるとグリーンドラゴンはその場に落ちて、すぐにブレスを使う体勢をとった。
グリーンドラゴンの首が上がり、ブレスを吐き出そうとしている。
一也は何を思ったのか、ブレスをしようとしているグリーンドラゴンへ向かって一直線に走っていた。
(何をする気だ!? 当たれば死ぬぞ!)
俺は一也のやろうとしていることがわからず、一也がブレスに当たって死ぬのではないかと思った。
「一也!! 避けろ!!」
俺の思いも届かず、グリーンドラゴンは一也へブレスを当てるために首を振り下ろす。
一也は止まらずに、そのままの勢いでグリーンドラゴンへ飛びかかる。
(当たる!)
俺がそう思った時、グリーンドラゴンが振り下ろしている顔へ、一也は棒を振り上げて叩き込んだ。
棒がグリーンドラゴンのあごに当たった瞬間、グリーンドラゴンの口から出ようとしたブレスが口の外に出ることなく爆発している。
一也は爆風で吹き飛ばされ、グリーンドラゴンは黒い煙を口から出してその場へ崩れ落ちるように地面へ倒れた。
一也とグリーンドラゴンはほぼ同時に立ち上がる。
グリーンドラゴンは一也から離れるように足を引きずりながら歩き出して、羽ばたこうとしていた。
一也はそれを許さず、グリーンドラゴンを追いかける。
グリーンドラゴンの体が浮いて飛び立とうとする前に、一也は棒をグリーンドラゴンへ向けた。
「ライトニングボルト!」
一也の魔法がグリーンドラゴンの翼に当たり、グリーンドラゴンは地面へ叩きつけられるように落下した。
さらに、一也は墜落したグリーンドラゴンの口の中へ棒を突っ込む。
「ライトニングボルト!」
一也が魔法を唱えたら、グリーンドラゴンは痙攣するように体を震わせる。
グリーンドラゴンが動かなくなるまで、一也は魔法を唱え続けた。
一也が魔法を止めるとグリーンドラゴンは完全に動かなくなり、体中から白い煙が上がっている。
動かなくなるのを確認してから、一也はグリーンドラゴンの口の中から棒を引き抜いてこちらへ近づいてきた。
そして、俺へ笑顔で話しかけてくる。
「真央さんは今日から、自分のことを【私】って呼んでくださいね」
「あの賭けマジだったのか……」
「当たり前です」
「わかったよ……できるだけやってみる」
一也が俺へ話しかける様子は、グリーンドラゴンと戦っている時とは別人のようだった。
その姿に怒る気もうせて、やりたくもない約束をしてしまう。
俺はゆっくりとグリーンドラゴンに近づいて、一也がグリーンドラゴンを討伐したことを確認した。
そして、これからは俺が動かなければならない。
「一也よく聞いてくれ、今から1時間後にグリーンドラゴンと一緒に帰還してほしい」
「1時間後ですか? 真央さんはどうするんですか?」
「俺は先に帰還して、グリーンドラゴンを受け入れる準備を整える」
「わかりました。それと、できるだけ私って使ってくださいね」
俺はわかったと一也へ伝えてから、グリーンドラゴンの翼の一部を切り取り、リヤカーを持ってギルドへ帰還する。
ギルドへ帰還して、まずはリヤカーの中身をギルドの裏にある素材引取場へ預けた。
素材を全て預け終わり、今度はギルドの受付へ走る。
(後45分……はるちゃんいてくれ!)
時計を確認しながら受付に着くと、はるちゃんがいてくれた。
「はるちゃん! 今すぐギルド長へ会わせてくれ!」
「いきなりどうしたの!?」
はるちゃんは俺が急に来て驚いてしまったようだった。
しかし、ここで理由を詳しく説明している余裕はない。
「はるちゃん! 急いでいるんだ頼むよ!」
「ギルド長は今接客中で……」
「なら、今すぐこれをギルド長へ渡してくれ」
俺ははるちゃんへグリーンドラゴンの一部を渡して、はるちゃんの目を見つめる。
「これがそんなに大変なものなの?」
「ここでは言えないくらいすごく」
はるちゃんは俺を見つめて、決心したようにうなずいてくれた。
「わかった。今すぐにギルド長へ渡してくるね」
「ありがとう。頼む!」
その後、すぐにグリーンドラゴンの一部を持ったギルド長が血相を変えて俺のところまで来てくれた。
時間を確認したら、後30分で一也が帰ってきてしまう。
「太田、これはどこから!?」
「さっき樹海で一也が倒した。後30分で帰ってくるように伝えてある」
「30分か……」
ギルド長も時間を確認して、腕を組んで悩んでいる。
ギルド長の後ろから黒いスーツを着た男性がきており、ギルド長はその人と相談を始めた。
すると、スーツの人がギルド長へ提案をしている。
「今すぐにこのギルドを閉鎖し、隔離しましょう」
「そうだな。今すぐ取りかかろう」
ギルド長がギルド職員へ指示を出し、このギルド全体が外から見えないように隔離される。
それに加えて、ギルド内から人を追い出して職員以外の者がいないようにしたため、俺もギルドの外へ出された。
(どうしてこんなことに……)
自分の考え以上の事態になり、混乱してしまう。
もう、今日は家に帰ろうとしていたところ、はるちゃんから明日一緒に遊ぼうというメッセージがきた。
(はるちゃんから遊ぶ連絡が来るなんて珍しいな)
俺ははるちゃんへ大丈夫だと返信した。
はるちゃんはギルドに泊まり込みで働いているので、今日は近くのホテルに泊まろうと思う。
俺はホテルへ向かっている最中に時計を確認して、時間通りに一也がグリーンドラゴンと帰還していることを祈った。
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