剣士中学生編⑤〜伊豆高原フィールドへ出発〜
翌日、伊豆へ行くために車に乗って朝早くに家を出た。
出発前に両親が車へ荷物を積み込んでおり、俺の荷物も渡すように言われたので剣だけを渡した。
父親からこれだけかと言われ、剣しか必要ないのでそうと答えると、2人とも眉をひそめられる。
父親が再度確認してきたが、本当に荷物はこれだけと説明すると車の中で待っているように言われた。
それからしばらくの間、荷物を積み終えるまで両親を車の中で待つことになった。
家から車で2時間ほど移動すると、森林の手前に伊豆の高原フィールドと書かれた入り口のゲートが見え始めてきた。
ゲートの左右には高さ5メートルほどのフェンスが森を囲むように続いており、正面の入場ゲートは2重扉になっていた。
1枚目の手前で車が止まって、父親はゲートの手前にいる人へ何かを見せる。
すると、1枚目の扉が開き、車が前進してから1枚目の扉が閉じる。
完全に閉じた後、2枚目の扉が開いて中へ入れた。
まだ車が進んでいるので、父親に先ほどのやり取りについて聞く。
「お父さん、今はなにを見せていたの?」
「ああ、さっきは冒険者学校の卒業証を見せていたんだよ」
「へー」
「基本的に、グループの中に必ず1人は冒険者学校とかの上級学校以上の卒業証とかを持っていないとこういう場所には入れないんだ」
父親はこちらから話をするとちゃんと話をしてくれる。
だが、母親は車に乗ってからほとんど話をしていない。
ゲートを通ってから10分ほどで車が止まり、父親から降りるように言われた。
(まだ森の中にいるのに、ここのどこが高原なのだろう?)
もう少し周りを見たいと思って車を離れようと歩き出した瞬間に、父親の怒鳴り声が聞こえてきた。
「危ないから行くんじゃない!!」
普段聞いたことのない父親の声に驚愕し、父親の方を見るとこちらを見た後、すぐに荷物を降ろし始めた。
父親を手伝おうと近づいたら、積んであった俺の剣だけ押しつけるように渡される。
「お前はこれだけだろ。他は父さんたちのだから、お前は待っていなさい」
父親は俺を突き放すように言葉を放って、自分の準備を進める。
母親を見ると父親と同じように何かを準備しているので、おとなしく車のそばで待つことにした。
しばらく待っていると、父親が全身をプレートで覆っている防具をつけており、母親も同様に全身を防具で覆っている。
かろうじて頭部の装備からは顔が見える。
俺は普段通りの服装で、無地の黒いTシャツを着て、デニムパンツをはいていた。
(両親はこんな恰好で戦いに行くのか……)
そんな風に眺めていると父親はさらに車からなにかを取り出した。
父親の両手にしっかりと握られているのは銃だった。
銃にはあまり詳しくないので名前はわからない。
(形状的に、おそらくショットガン系の銃かな?)
父親は感触を確かめるように銃を眺めていた。
「よし!」
父親がいきなり声を出し、カシャカシャ音を鳴らしながらこちらへ近づいてくる。
そして、俺と母親を見た後に真剣な表情で森の奥の方を向く。
「行こう」
父親が歩き始めると母親も回りを気にしながらその後についていく。
両親が歩いているのを見つめて、少し考えてしまう。
(すごく動き辛そうだ)
2人はなんでこんなに防具を着けているのだろうかと思いながら俺は持っていた剣を見る。
(これだけあればなんとかなると思うけど……)
俺は疑問を持ちながら背中に剣を背負い、2人の後に付いていった。
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