真夜中の配信

大黒天半太

真夜中トーク

 こんばんは、日本最高の霊能者・土門知朱どもんともあきの一番弟子、中丸純輝なかまるじゅんきのマルチ・オカルト・チャンネル【純輝堂じゅんきどうへようこそ】。


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 今夜の配信は、【純輝堂へようこそ】にリクエストをいただいたので、いつもと時間も場所も違って、真夜中の心霊スポットから実況中継です。


 そろそろ草木も眠る丑三つ時、午前二時ですね。心霊スポットと言えば、トンネル、廃病院、廃ホテルでしょうか。


 墓場は、本来供養されている霊ばかりのはずなので、出る方がおかしいんですが、雰囲気に乗せられるお調子者もいるんでしょうね。


 はい、到着しました。本日の心霊スポットは、〇〇ピー音トンネルです。


 結構、近所なんですよね。実家は県内でも田舎の方だったから、都市圏に遊びに行くのには、峠越えのバスに乗るので。


 このトンネルは、午前中には行くために、夕方から夜には帰るために通るんですよ。


 だから、後付けの怪談話をいくら聞いても、人間の想像力って凄いなぁと思うばかりで。


 ああ、そう言えば怪談じゃないんですけど、ここのトンネルで昔、事故が起こった時に、たまたまオープンカーだった運転者の首が、切断されて飛んで行って、行方がわからなくなったそうなんです。

 トンネルの中なのに、ですよ。


 ところで、皆さんはこんなことを見たことありますか? うちの大学の古い学食の天井の一画に、タバコがたくさん下がってるんです。


 まだ、食堂が禁煙になる前のことらしいので、十数年以上前の先輩の仕業なんでしょうが、吸い終えたタバコを天井に向かって垂直に投げつけると、吸い口の濡れた部分が天井の平らなところと密着して、そのまま乾燥するとくっついたままになるらしいんです。


 もう想像つきましたよね。


 警察は、どこかに首は転がってるものと思って、下しか探してなかったんですが、血のりと事故の勢いで天井に密着していたんです。


 タバコは軽いので、天井にくっついたままになりますが、首は重いので、そうはなりません。


 事故の封鎖がやむなく解かれ、普通にトンネルの通行が再開して数時間後、たまたま通りかかった自動車のフロントグラスに、断面が乾燥してきた首が、重量と密着力のバランスが崩れた瞬間に落ちて、驚いたその車の運転手もトンネル内で事故を起こすという訳で……偶然の物理現象まで心霊スポットのせいにされたら、たまりませんよね。


 今までの配信では、ウチの師匠の受け売りですが、霊力とか霊格の向上のために、規則正しくバランスの取れた、心静かな生活が必須、と言い続けて来ました。


 もう、こんな時間に外をうろうろして、心霊スポットで大喜びとかいうネタとは正反対なので、本当は、このリクエストはお断りしてボツにしようと思ってたんですが、前の配信に付けられたこのリクエストを、偶然ウチの師匠が読んで、電話かかって来たんですよ「面白そうだから、やってみたらどうだ」、と。


 まぁ、そうなったら、やるしかありませんよね。


 それにしても、ここからどうなるのかが、ホントに楽しみです。


 だって、ホンモノの心霊攻撃ですよ。


 私の配信なんか見たこともない、ウチの師匠の声で。師匠の電話番号から、かかって来たんですから。ちょうど、午前二時に。


 ウチの師匠は、もう、午後十時には寝て、朝日とともに起き出す生活リズムの人なので、多分熟睡してる時間だし、そもそも私に、こんな非常識な時間に、電話かけてくるなんてありえません。

 それでも、本人じゃないとは言い切れないほど似ていたので、生半可な悪霊や術士、道士の類ではありえません。


 時間と場所は相手のリクエストに合わせたので、こちらはこちらのルールで、ここからは対応したいと思います。

 さぁ、どっからでもかかって来いやぁ!(笑)


 もうすぐトンネルの出口です。出口のすぐそばにある公衆電話ボックスも、心霊ネタでよく使われるんですよ。

 あ、案の定、公衆電話が鳴り出しました。


 それではこの続きは、次回の配信で。


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