猫の手も借りたい

@yawari

第1話

「あああああああ」

「どうしたんだよ大輝」

「まじで明日までに終わらせないといけねぇ課題が終わんねぇんだよ」

「ふーん。まぁがんば」

「おい、彩月は終わってんのかよ」

「そりゃもちろん」

「うわぁーうぜー」

「いやなんでだよ」

「まじで誰かに手伝ってほしいわー。今まさに猫の手も借りたい状態」

「にゃん」

「?」

「にゃん」

「お前どしたん」

「いや、猫の手も借りたいって言ってたから俺が猫になれば猫の手を貸せるかなって」

「まじ!手伝ってくれんの!?」

「まぁ猫の手も貸すくらいだったらできるよ」

「まじ!本当に助かるわ!」

「じゃあ後で大輝の家行くわ」

「おけ、ほんとにありがと!」


ピンポーン

チャイムがなった。

「大輝?来たよ」

「ありがと!今開けるね」

玄関に向かってドアを開けるとそこには段ボールを持った彩月が立っていた。

「彩月!ナイスタイミング!ちょうどわかんない所あったから聞きたかったんだよ!」

「え?俺課題手伝わないけど?」

「?」

「俺はただこれ。渡しにきたの」

そう言って彩月は持っていた段ボールを私に押し付けて、

「じゃあね、あとそれ明日返してね」

そう言って逃げるように帰って行った。

「おい!待て彩月!」

僕が名前を呼んでも振り向きもせずに彩月は帰って行った。

(なんだこれ)

貰った段ボールは少し重くて傾けるとゴロゴロと音がする。

「なんだろう」

彩月のことだし勉強に役立つアイテム、例えばエナジードリンクとかが入っているのかな、そう思いながら僕は自分の部屋に戻って段ボールを開けた。


そこには文字通り猫の手が入っていた。

肩の所から抜かれたかのように骨がむき出しになっていて、そこからはまだ血が滴り落ちてしまうんじゃないかってくらい赤くて生々しかった。

「うわあぁぁ」

僕は怖くてそれを投げ出してしまった。

作り物だと思いたかったが、投げた時に空中で曲がったりする様子を見て本物としか思えなかった。

そんな物を見てしまっては課題に集中出来るはずもなく、怖くなってすぐに布団に入り寝てしまった。

次の日学校に行くと彩月が僕に

「返して」

そう言ってきた。僕は彩月の言動に恐怖を覚え、

「あんなもの、、学校に持ってこれる訳ないだろ!てかなんだよあれ!普通に犯罪だからな!」

と早口でまくし立てた。

すると彩月は大きな声で笑い、

「だって君が言ったんだよ。

猫の手も借りたいって。

だから貸してあげたんじゃん」

彩月は何かに取り憑かれたかのように狂っていた。

(逃げなきゃ)

僕はそう感じて彩月から逃げようとした。でも、彩月は僕の腕を掴んで、

「何、なに?借りパクする気?返せよ返せよ返せよ返せよ!!」

どんどん彩月の語気は強くなりそれに伴って腕を掴む力も強くなっていく。

腕の痛みに耐えられなくなり僕が、

「痛いっ!」

と言うと腕を掴む力が無くなった。彩月を見るとさっきまで僕の腕を掴んでいた右手にはナイフが握られていた。

「俺の猫の手、返してくれないんだったら君の腕貰うね」

彩月はサイコパスのような笑みを浮かべた後に僕の腕を肩からナイフで切り落とした。

「借りたものはちゃんと返そうね」

彩月が悶えている僕を見ながらそう言って、僕の腕を持って教室を出ていく。

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