第5話 闇の世界 残された者

タナカヤスオが勤務していた会社から、ヤスオの妻宛てに連絡が来て、妻はパートで働く職場から急遽、家へ帰宅した。

家の中には、学校をさぼった娘が母からの連絡を受け、リビングでソファに座っていた。

娘はこの状況でも、危機感をもっておらず、母が帰宅してもいつも通りだった。

母から直接何かを言われても、娘は「邪魔な奴がいなくなってくれて良かった」などと口にした。

この状況を、ちゃんと理解してないらしい。

ヤスオの妻だけが、頭を掻きむしり、イライラを募らせて、姿が見えないヤスオに対しての怒りを爆発させていた。

一方、アヤの母も、アヤがいなくなった事に気付き、慌てて色んな場所に連絡していた。

さっきまで一緒にいたはずだが、軽く睡眠中にアヤはいなくなっていたのだ。

一人で出かける事は絶対になく、少女という年齢からあまり遠くへ行っていないだろうが、盲目である分、普通の少女が外出するより、危険は増える為、気が動転し、心臓はバクバクと動き、体は落ち着かない。

家の電話が鳴り、それが警察からの電話でさらに、アヤの母親は心臓が高鳴り、受け答えするだけでやっとだった。

警察への連絡は、アヤが乗ったタクシーの運転手がしてくれたものだった。

タクシーの運転手はアヤを乗せて後悔していた。

行先やアヤが盲目である事を知り、家へ帰った方が良いと言ったが、アヤは聞く耳を持たなかったという、そこで目的地まで乗せ、料金は「母の財布を置いていく」と言われて、アヤは財布を車内に残し、外へ出たという。

それからすぐ、タクシーの運転手は、その財布からアヤの母親の情報と、警察への連絡を入れたという事だった。

警察はタクシーの運転手がいる場所まで行き、アヤを探すことになり、事は大事になり始めていた。

その時、ヤスオとアヤの二人は、もうすでにその場にはいなかったのだが、二人は運命の導くまま、二人で寄り添い、別の世界へ行こうとしていた。

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