猫認証

最時

新商品プレゼン

 オフィスのお昼休み。

「マナ。午後に新商品企画のプレゼンがあるんだけと聞いてくれる」

「いいけど」

「近年、労働者不足が大きな問題となっています。そこで新たな労働力として注目されているのが猫です」

「・・・ まだお昼休み時間あるし、少し寝るね。お休みなさい」

「マナ! 最後まで聞いて」

「そのプレゼン本当にするの?」

「もちろん本気だよ。最後まで聞けばわかるから」

「わかりました。続きをどうぞ」

「そこで猫や、猫を雇用する会社をサポートするために猫の肉球認証システムを開発します」

「・・・ それどう使うのですか」

「新たに猫を雇用する会社の多くは猫慣れしてない方も多く、見た目で猫を区別するのが難しい。そこでこのシステムで部外猫の侵入を防ぎます」

「へー。具体的にどういうシステムなんですか」

「あらかじめ猫の肉球の大きさや位置関係、肉球紋データーを登録しておき、猫ドアの前のセンサーで認証して、ドアのロックを解除するという仕組みです。

 猫さん達は歩くだけ、会社も猫の特定に煩わされることのない。

 猫の社会進出に欠かせない技術となることは間違えありません。

 この技術で猫の手を借りて、労働力問題は解決します」

「・・・ そうなんだ」

「他、猫の鳴き声認証も同時に進めて、それぞれの事情に合ったシステムを選択していただければと思います。

 現在、猫の社会進出に関連したシステムを開発している会社はなく、当社で独占できると思われます」

「・・・ それ、藤木先輩に話した?」

「うん。そしたら

 技術としては面白いけど、使い道がな・・・ 猫の社会進出は考えられないって。

 頭ごなしに怒られるより応えた」

「藤木先輩はわかっているわね」

「じゃあ、どうすればいいのさ! 他のアイディアなんかないんだよ!!」

「ツバサ・・・ よく今までやってこれたわね。そんなプレゼンするくらいなら、体調不良とかで早退した方がいいと思う」

「そこでマナにこの技術を生かすアイディアを考えてほしいんだ」

「無理だから。他のを考えてよ」

「そんなこと言っていいのかなあ。この写真を見て」

 ツバサのスマホには猫の写真が表示されている。

「この猫がどうかしたの」

「この猫ちゃんは、マナの大好きな藤木先輩の愛猫」

「そっ、そうなんだ。猫好きなんだ」

「そう。マナのアイディアで藤木先輩の猫が喜んだら、藤木先輩はマナに感謝する。

 その感謝の気持ちが愛に変わるのはよくあることだと思うんだ。

 マナのためにこのプレゼンをするんだよ」

「えー。何それ」

「想像してごらん。猫と戯れる藤木先輩に、マナ、ありがとうって言われることを」

「・・・ ちょ、ちょっとトイレに行ってくる」

「マナ~ 逃げないで~♡」

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猫認証 最時 @ryggdrasil

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