猫を吸う

@chauchau

課題も仕上げました


 猫の手も借りたい。

 どうして猫の手なのかを考える。猫が仕事を手伝ってくれるとは思えない。それでも、どうしようもなく忙しいときに借りたいのは猫の手なんだ。

 なお、この問いを考える際に、仕事を手伝ってくれるはずのない猫の手すら借りたいほど忙しいからじゃないかという答えはしてはいけない。


 では、考えてみよう。

 どうして猫の手なのか。犬の手ではない理由は簡単だ。なぜなら、同意の言葉に犬の手も人の手にしたいという言葉がある。つまり、猫の手も借りたいを有名にした人が猫好きだったというわけだ。

 その上で、どうして人間ではなく猫の手なのか。


「分かるか?」


「……、人間の手を借りた場合、馬鹿がやってきてむしろ邪魔になるからではないでしょうか……」


「よく分かってるじゃないか」


 茶色く滲んだノート。

 ほろ苦く香ばしい香りが眠気に囚われる頭を刺激する。


「俺は何て言った?」


「邪魔する前に帰れ……」


「そうだな」


 机を拭く。

 カーペットの染みは取れそうにない。今度、ホームセンターで良いものがないか探してくるしかない。


「あ、あのね?」


「なんだ」


「お手伝いしようと、思って、あの」


「分かっているから怒っていない」


「……絶対怒ってるし……」


「何か言ったか」


「何も言ってません!!」


 猫は良い。

 犬も良い。


 猫を飼い始めた友人が、毎日猫を吸っているらしい。万病に効くと言っていた。それだけで猫は素晴らしい。犬を飼っている友人は犬を吸っているらしい。犬も万病に効くとのことだ。


「お手伝い、したくて……」


「気持ちだけもらっておく」


「猫よりは役に立つかと……」


「はっはっ」


 最高の冗談だ。

 腹がねじれそうだ。


「うぅぅ……」


 布巾を洗う。

 シンクに茶色が広がっていく。ああ、そうとも。気持ちだけ頂くことが寛容なんだ。


「にゃ、にゃー……」


「は?」


「にゃー……」


 下手くそな猫らしき何かの鳴きまね。

 猫以下だと言われて、せめて猫になりましたとさ。


「お手伝いしますにゃのわぃぃ!?」


 放り投げる。ベッドに。

 猫は。吸うものらしい。


「いや、待っ! 目が怖いっ! 目っ! 目ぇ!?」


「やかましい」


 確かに、万病に効く気はした。

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