追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

第一章

第1話、魔力ゼロ

「リュウキ、残念だ……お前を、この家から追放する」

「そんな!! 父上、僕は!!」

「黙れ!!」


 いつも温厚な父上が、執務机をドンと叩く。

 その剣幕に、僕はビクッと震えてしまった。

 そして、父の傍に立つ継母のイザベラが、クジャクという魔獣の羽で作った扇を広げ、口元を隠しながら言う……断言してもいい、あの扇の下の口は、歪んでいる。


「まさか、当主の座欲しさに、キルトを毒殺しようとするなんてねぇ……」

「知らない!! 僕がそんなことするわけがない!!」

「では、あなたの部屋から見つかった毒瓶はなにかしら?」


 勝ち誇ったように言うイザベラ。

 父上の執務机の上に、毒の入った小瓶が置かれている。

 当然、僕はこんなもの知らない。


「魔力を失ってしまった腹いせをするなんて、ねぇ……姉上の子は卑しいですわ」

「……なん、だと」

「よせ、イザベラ」

「ああ、申し訳ございません、旦那様」


 魔力を失った。

 違う。

 僕は叫びたかった。

 

「ふふ、大賢者に匹敵する魔力を持つ神童だった頃が懐かしいですねぇ」

「……っ」

「イザベラ、もうよすんだ。リュウキ……残念だが、お前はこのドラグレード公爵家から追放する。理由はもう言わなくてもわかるな?」

「……僕が、魔力を失ったから、ですか」

「そうだ」


 父上は、きっぱり断言した。

 魔力とは、全ての力の源だ。魔法を使うエネルギーであり、魔道具という魔力で動く道具も魔力がないと使えない。

 だが、僕は……その魔力がない。

 ある日、魔力を全て失ってしまったのだ。

 でも、僕は覚えている。魔力を失った原因を。


「ふふふ……」


 イザベラ。

 この女が、僕の魔力を全て奪った。

 そして……義弟のキルトに、僕の魔力を全て移したのだ。


「リュウキ。いくらかの金貨を渡す。それで王都に行き、職を見つけ暮らすがよい。以上だ」

「ち、父上……」

「以上だ」


 それっきり、父上はもう僕を見ていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る