記憶回讐(きおくかいしゅう)〜僕は何者〜
小林一茶
第1話 死後の世界
青空の世界が半分、真っ暗な世界が半分。僕はその境界線にいる。
グレーの長袖の服を身にまとい、何もない場所で突っ立っている。
冷静に辺りを見渡す。
片方の青空が広がった世界は本当に良く空が青く澄み渡っており、見ているだけで心が落ち着く。良い気分だ。
もう片方は何も見えない真っ暗な世界。
この世界を知りたいという感情は全く湧かない。見ているだけで恐怖というものを感じる。一瞬で最悪の気分になる。
何故僕はこんなところにいる?自分のこともでさえもよく分からない。名前も、過去も。全てだ。
目をつぶって思い出そうと試みる。頭の中は真っ白であるが、心の中は少し鼠色がかっている。記憶がない?
「やっと、目覚めたか」
誰もいないはずの空間のはずなのに、突然背後から声がした。
振り返ると白い人間の形をした生物が僕を見つめて話しかけている。
僕はその生物をにらみつける。
「お前の願いを叶えてやったのに、お礼の言葉は一つもなしか」
お礼?何を言ってるんだコイツは。コイツが僕に何か良いことをしたのか?願いってなんだ?
情報が欲しい、コイツからいろいろ聞きださないといけない。
「ーーーー!」
声を出そうとした瞬間、急に喉が火傷をしているかのように熱くなり、声を出すことができない。僕はそのまま地面にうずくまる。苦しい。
「あはは、熱いだろ。俺がこの世界を作ったから、俺が全部管理をしているんだよ。だからお前は今喋れない。俺がそう望んだから。」
ここはコイツが作った世界なのかーーーーー
喉の火傷から意識が飛びそうだが、力を振り絞って言葉を投げる。
「ここは、、、おまえは、、誰だ、、、」
「おおすごいな、流石だ。いいぞ教えてやる。俺は何もない場所からどんなものも創り出すことができる。人間がよく使う言葉でいうと、、カミサマ?みたいな存在だ。そしてここはお前が今後どちらの世界に進むのか決める場所だ。光か闇か。今までの行いを材料として判断をする」
コイツは何を言っているんだ?それに僕が何をしたっていうんだ?
「簡単なことだ、お前は死んだんだよ。」
ーーーー死んだ?
「そう、お前が望んだこと。死だ。まあ記憶もないから無理はない。これから俺とお前で今までの記憶を見て、善悪を判断する。」
コイツは僕の背後に指をさした。すると境界線上に白い扉が現れる。
熱かった喉は次第に少しずつ落ち着いた。
冷静になり、まずは死を受け入れる。
簡単なことではない。ただ、死んでしまったことよりも、僕自身が死を選んだ理由が気になった。
過去の自分に何かあったことは間違いない。生きることが辛かったのか。それとも何か別の理由があるのか。
「ついてこい。」
自分をカミサマと名乗る生物は扉を開け、すっと中に入っていき、消えた。
厚い扉の前で、もう一度自分が何者だったのか考えてみたがやはり駄目だ。何も思い出せない。
アイツについていけば、自分が今まで何者であったのか分かるかもしれない。自分の過去を知る必要がある。
僕は後をついて記憶の回収へと向かったーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます