第63話 再生



 パステルナークとロルカは共に食事をしている。


「ロルカ、先日のことだが」


「どうした」


「本当に帰らなくても良いのか」


そう訊かれ

ロルカは少し思案してから


「帰ろうとは思っていない、ただ」


「ただ?」


「ただ、ネルーダ王国、親愛なる国王に、帰らない事を報告したかった」


「それは出来ない事でも無い」


「と言うと」


「詳しいことは食事が済んでから話そう」


そこへエリオットが

まさしく風のように現れる


「パステルナーク様、アラゴンの牧場で勉強中のホイット・マンの生家、マン家が落城の報告を聞き、疎開地を離れ、数日の内に入城の運びとなります」


「なんだと」


パステルナークは持っていた匙を落としそうになりながら

椅子から跳び上がる。


「尚、故国を逃げ、決して多くは居ませんが、各国に散らばった家臣達にも落城の報告が届きましょう。いずれも数日、かかっても数週間の間には入城いたしましょう」


「ロルカ、聞いたか」


パステルナークの目を見ながら

ロルカは真面目に頷く。


妖魔が城を襲う事を

風の者達の報告で知った王の命令で

国外へ逃げ延びた家臣達が戻ってくる

何とか生き延びて国外へ逃亡できた者達が戻って来る。


パステルナークにとって

これほど嬉しいことはない。


頼れるものが増えていく

そう思っている。


「以上、報告まで」


そう言うとエリオットは

来た時と同じように風の如く消え去る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る