第42話 八一



 ロルカとエリオットは鹿から降りて

王の間へ行く為に二頭の鹿を城の外へ放つ。


城門を通り城の中へ入ると

明かり取りの窓から日が差し込んでいるだけで

広間は非常に暗かった。


広間には何の気配も無く静けさだけが不気味に漂っていた。


広間の壁に沿って上へと続く階段を登ろうとした。


二人が階段へと歩いて行くと階段の下の壁が微かに音を立てる。


「風の者だけが知る隠し扉、そこに居るのは妖魔だな」


エリオットが言うとロルカは破邪の剣に手を掛ける。


「フッフッフッ、タダヒトリノ イキノコリガ イコクノオトコ ツレテ モドッテキタカ」


声と共に壁が開く。


「貴様、シユウ」


開いた壁から出て来た妖魔の頭は牛に似ていた。


いや、鋭いツノを持った牛そのものであり

下半身は3本に分かれた爪

鳥の脚を持つ獣身であった。


「ロルカ、気を付けろ、シユウは鋼鉄の頭を持っている。首から下を狙え、そして奴は一人では無い。八十一体、居る」


「ウルサイ オンナ シャベレナク シテヤル」


そう言うと鋭い三本の爪を持つ両足を前にしてエリオットに飛び掛かって来た。


その直後に壁から蒸気が漏れるようにして次々と同じ獣身の妖魔が現れて来る。


合わせてその数、八十一体。


「ロルカ、走れ、階段を登り王の間へ行け、雑魚は私一人に任せろ」


ロルカは何も言わず頷くと階段に向かって疾走する。


一体のシユウが疾走するロルカの前に立ちはだかる。


ロルカは抜刀するとエリオットに言われた通りに頭を避け首を水平に斬る。


僅かに太刀筋が外れたせいか

剣がシユウの顎に微かに当たり高い金属音がする。


「外したか」


そうロルカが歯噛みしながら言うと

シユウの首が高く舞い上がる。


「多少のズレがあろうとも、私は必ず斬る」


と破邪の剣が言う。


「パステルナーク」


そう言うとロルカは抜刀した剣を鞘に収め

壁伝いの階段を駆け登り始める。

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