第39話 美しい都
疫病、そして飢えて動けない者達、壊れた板塀。
それらの者、或いは物に当たらないように慎重に鹿は歩いている。
この病んだ集落の向こうには低いが、それでも壁のような物があり、王都を囲っているように見える。
「以前に、此のような壁は無かった」
パステルナークが独り言のように言う。
壁の近くまで来ると幾つもの門が見えた。
そのうちの一つの門まで来て見ると
門には扉が無かった。
出入りは自由になっているようだ。
と言うよりも
入るのは自由
出ていく時は我らで運び出してやるから安心しろ
そんなふうにロルカには思えた。
念通力で聞こえたのか
「その通りだ」
とパステルナークが答える。
「入るぞ」
とエリオットが言うと
またもやロルカが先頭に立ち
鹿を進ませる。
中に入ると
塀の中は美しい花が咲き乱れていた。
道の側には綺麗に装飾を施された花壇があり
その中で一人の女が綺麗な作業服のようなものを着て働いていた。
しかし
よく見ると
その女の腕は火に焼けてカサカサになっており
顔は痩せこけて見るからに栄養が不足していることが分かる。
「王都に住んでいた農婦だ。今は奴隷だが、使い物にならなくなると、あの門の外へ投げられるだけだろう」
その時不意にロルカは
その女性と目が合ったような気がした。
「ポー、許さぬ」
今度は、剣からの力を感じ、ロルカは働いている女性から目を離し、そっとパステルナークを見た。
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