第7話 二人と二匹
果たして暫く歩くと前から愛想の良さそうな老人が歩いて来た。
老人はロルカの前までくると笑顔で深々と頭を下げた。
ロルカはパステルナークに言われた通りに歩きながら静かに礼をして過ぎ去った。
このまま歩いて行けば、一人の女に出会うことになるはず、そうなれば二人の人間を斬る事になるとロルカは思う。
然し、ロルカのそんな気持ちを理解できていないのかパステルナークは何も語らない。
そして、ロルカの行く道の向こうから一人の人間が歩いて来る。
だんだん近づいて来るに従って、その者が女らしい事が見分けられるようになる。
この女を斬らなければならないのか?
ロルカも女も互いに歩を緩めず歩き続けると、女の容姿までが分かるようになる。
美しい。真っ直ぐな髪を後ろでまとめ、村の女であろうか? 美しい娘だ。然し何かが違うような気もする。
女はロルカの近くまで来ると、にこりと笑い挨拶をしようとするが、その時、やっとロルカは気付いた。
女の服は、村の女が着れるような安物の服ではない。
刹那、ロルカは抜刀し振り向きざまに剣を下ろした。振り下ろしたと言うよりも剣がロルカの腕を引っ張るように降りたような感じだ。
剣はロルカを中心に美しい弧を描いた。
そして目の前に居たのは左肩から右脇腹までが真二つに切り離された先ほどの老人の服を着た化け物、まさにロルカに向かって飛びかかろうとしていた瞬間であった。
ロルカは、その化け物の胴体が未だ地に落ちない間に、瞬時に土を蹴り、二つに切り離された化け物の上半身を肩で体当たりして走った。
次に言われた通りに足を止め踏ん張ったが、勢いのついた身体は靴の裏から土煙を上げて大地を滑る。
「遅い!」
とパステルナークが叫ぶと、剣の柄が先に出て、化け物と変化した女の鳩尾に一撃を入れる。
すかさずロルカは剣を平衡に保ち、横一文字に化け物を斬る。
切れる、凄まじいほどに良く切れる。まるで空を切るように音も無く切れる。
先程と同じように化け物の身体は二つに離れている。
ロルカは肩で息をしながらパステルナークに問う。
「こいつらは誰だ」
「見て分かるように人ではない」
「では」
「チミとモウリョウだ」
「チミは山の妖魔で、モウリョウは川の妖魔だ。2体とも死者の肉を食らう妖魔であったが、奴が来てからは、生きている者を殺し、その肉を食らうようになった」
「奴とは」
「話せば長くなるが、共に歩いていく内に少しづつ話せると思う、また奴にいつか会わねばならない。その時に全てが理解できるであろう」
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