Sakura
みやぎ
第1話
ばあちゃんの何回忌だったっけ。
じいちゃんが部屋を片付けたいからって、何回忌か忘れたけど、法要が終わってから手伝っていた。
じいちゃんは自分もいつお迎えが来るか分からないからなぁ、なんて不吉なことを言いながら箪笥の中を整理していた。
俺はじいちゃんが整理してるすぐ下の箪笥の引き出しを引き抜いて、じいちゃんに聞きながら要るものと要らないものに分けていた。
そこに見つけたのが、蓋にさくらの花が描かれた、長方形の木の箱。
引き寄せられるように手に取って、開けた。
中には何も、入っていなかった。
何となく気になって、その箱を持ってぐるりと回して見たら、裏側にぜんまいがあった。
オルゴール?
これがばあちゃんの物なら、下手すると何十年も前の物。
俺はダメもとでぜんまいをまわしてみた。
蓋を開ける。
奇跡的にオルゴールは、鳴った。
でも、流れてきたのは知らない曲。
「じいちゃん、この曲知ってる?」
「んー?いやぁ、知らんなあ」
「知らないのかよ。ってかこれ、ばあちゃんのオルゴール?」
「そこにあったのならばあさんのだろ。ばあさんの物はおれはよう分からん」
よう分からんって、長年連れ添ったのにまじかって思いつつ、俺はそのオルゴールの蓋を閉じた。
もう一度裏側を見る。
さっきは気づかなかったけど、小さく何かが書いてあった。
「Sakura?」
「何だ
「ん?気に入ったって言うか………」
不思議な感じがする。何か気になる。
うまく言えなくて、黙った。
「気に入ったんなら、持って帰ってもいいぞ」
「え?いいよ。ここ、しまっとく」
一瞬迷った。
いいの?って言いそうになった。
でもすぐに、男がオルゴール持ってるって、何かカッコ悪くね?って思って、俺はそっとそのオルゴールを元の場所に戻した。
「要るならいつでも持って行っていいからな」
「ん?うん………。あんがと」
Sakura。
さくら。
桜。
季節は春。
それは、桜の開花が始まった頃の話、だった。
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