第28話 再会

 謁見のための大広間に通されたらどうしよう、獣人の作法も人の作法も知らないという私の心配は、杞憂に終わった。


 私達が案内されたのは、庭に面した大きい部屋だった。緊張して待っていると、リンクスさんが、現れた。

「坊ちゃま、魔女様。旦那様と奥様がいらっしゃいました」


 現れた二人は、男性はシロに顔立ちが似ていて、女性がシロと同じ色彩だった。魂の色だけでなく、家族であることが明らかな容姿だ。万が一、人違いだなどといわれて、シロが傷つくことはない。私の心配が、また一つ減った。


「まずは魔女殿、幼い頃に攫われた私達の息子を、今まで無事に育ててくれたことに深く感謝する」

シロに良く似た男性、シロの父親の言葉に、私の緊張は解けた。


「息子よ、お前は、慣れ親しんだシロという名前のままでいたいと聞いている。私が呼んだら、答えてくれるか」

男性は、大きく腕を広げた。

「シロ、抱きしめさせてくれないか」

シロが、息を呑んだのがわかった。


「シロちゃん、行っておいで」

シロの背を、軽く押してやると、シロはゆっくりと歩を進めた。

「大きくなったな」

ためらいながらぎこちなく歩くシロを待ちきれなくなったのだろう。男性は立ち上がり、シロを抱きしめた。


「大きくなったな。抱き上げて、片腕に乗るほどだったのに、本当によく、大きくなってくれた」

男性に寄り添うように立った女性も、シロを抱きしめ、涙を流していた。

「お父さん、お母さん」

おずおずと呼んだシロの声に、二人は強く頷いた。

「あぁ、そうだ」

「えぇ、えぇ。そうです。私達の子、あぁ、本当に、大きくなって」


 家族三人の再会に私は胸が熱くなった。ヴィアンカさんからは、三人の兄とヴィアンカさん以外にもう一人姉がいて、全員結婚して子供が居ると聞いている。


 仲間意識が強いということは、他者を排斥することにも繋がりかねない。彼らが、魔女の私に育てられたシロを受け入れてくれて、本当に嬉しかった。私は、シロを無事に育て、家族にところに返すことができたのだ。


 少し寂しいが、子は親離れする。魔女である私に育てられたシロが、育ての親である私から巣立ち、獣人の国で、立派に生きていってくれるだろう。


 達成感と寂しさを味わっていた私の耳に、外の喧騒が飛び込んできた。

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