第15話 シロの事情1

 シロは、リンクスさんと一緒に朝ごはんを作ってくれていた。

「美味い。ありがとう。頑張ったね」

「うん。いつも見ていたから、頑張った。リンクスにも教えてもらった

「シロちゃん、ありがとう。リンクスさんもありがとうございます」

「うん」

「どういたしまして」

人型になったリンクスさんは、瞳以外は人と同じだ。シロはふわふわの髪の毛の中には、犬の尖った耳が埋もれている。


「ねぇ。魔女、これからどこにいくの」

いつの間にか、犬に戻ったシロが、私に頭をこすりつけてきた。

「シロちゃん。シロちゃんは、ご家族はどうしたの」

「元気だって」

ご機嫌なシロの耳の後ろを私は掻いてやった。

「そうじゃないでしょう。シロちゃん。ご家族のところには帰ったの。どうしてここにいるの」

シロが黙った。

「シロちゃん」

シロちゃんが、乱暴に背中をこすりつけてきた。

「シロちゃん。ごまかさないの」

甘えた鳴き声を出すシロの顔を私は両手で挟んで、目を合わせた。

「シロちゃん」


「魔女様、坊ちゃま、そろそろ出発いたしましょう。ここは人族の村にあまりにも近いです」

私達の言い争いは、リンクスさんの冷静な声で終わった。


 天幕を片付けて、シロは不満なようだが、狼の毛皮もきちんと仕舞ったら出発の準備は完了だ。

「出発しよう。魔女」

人の姿になったシロが私の手をひく。リンクスさんも人の姿だ。魔女は旅に生きる生き物だ。一人旅が三人旅になるのだろうか。でも、それは違うはずだ。


「シロちゃん、ご家族はどうするの」

私の言葉にシロが黙った。

「では、歩きながら、順をおって説明いたしましょう」

リンクスさんに促され、私はシロに手をひかれたまま、足を進めることになった。

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