第11話 打ち上げ
無事テストが終了した俺達は、夕方家の近くのファミレスでテストの打ち上げをしていた。
参加メンバーは俺と恵美、西条先輩、夏海ちゃんの4人だ。
本当は夏海ちゃん以外の3人でするつもりだったのだが、恵美と西条先輩からぜひ呼んで欲しいという強い希望があったので連れてきていた。
「みんな、テストお疲れ様」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
「パパもお姉ちゃん達もテストお疲れ様」
俺達はそう口々に言葉を述べながらドリンクバーのジュースで乾杯をする。
「恵美もそうだけど西条先輩もありがとうございました。おかげで今回のテストはバッチリです」
「おお、そうか。そう言ってくれるなら私も水瀬に頑張って勉強を教えた甲斐があったよ」
「良かった、それなら私も安心だよ」
恵美にはこの間家で勉強を教えてもらったわけだが、実は西条先輩からもテスト期間中に家で勉強を教えてもらっていた。
俺が恵美から勉強を教えてもらったと話したところ、それならば私もと西条先輩が言い出したのでその好意にありがたく甘えさせてもらったのだ。
ちなみに恵美からは理系科目を中心に教えてもらったわけだが西条先輩からは英語を教えてもらった。
西条先輩は英語がずば抜けて得意であり教え方も非常に上手かったため今回の期末テストは高得点が期待できそうだ。
「恵美と西条先輩は今回のテストはどうだったんですか?」
「私はいつも通り全教科自信があるよ。多分今回も学年上位を狙えると思うな」
俺がそう尋ねると恵美は自信満々な表情で答えてくれた。
毎回学年トップクラスの成績を叩き出している恵美がそう言うのだから、今回のテスト結果も上位に違いない。
「やっぱり河上は凄いな。私の方はそれなりかな」
恵美とは対照的に謙遜気味にそう答える西条先輩だったが、3年生の中での成績は上の方だと聞いているので決して悪い結果では無いはずだ。
それからメニューを見てそれぞれ好きなものを注文し、しばらくしてからテーブルに運ばれてきた料理を和やかな雰囲気で食べ始める。
そんな中、何かに気づいた西条先輩がゆっくりと口を開く。
「……ところでさっきから気になってたんだが、河上は水瀬にちょっとくっつき過ぎじゃないか?」
恵美とはベンチシートの隣同士で座っているのだが、西条先輩からの指摘があったようにめちゃくちゃ密着していた。
距離が近い事に気付いた俺は何度か離れようとしたのだが、恵美の方からまた接近してくるため半ば諦めていたのだ。
俺達2人の様子を向かいの席から眺めていた西条先輩は少し睨め付けるような表情でこちらを見ており、羨ましそうにも見えた。
俺がそんな事を思っていると恵美は西条先輩を少し挑発するような表情で話し始める。
「そうですか? 私的には普通だと思うんですけど」
「羨まし……んん、2人の先輩としてそんな破廉恥な真似を認めるわけにはいかないな。だから今すぐ私と席を変われ、水瀬の隣には私が座るから」
西条先輩がこの状況をどうにか打開してくれると期待していた俺だったが、どうやらおかしな方向に話が行きそうだ。
「……美菜さん、ひょっとして羨ましいんですか?」
「ち、違うぞ。水瀬にこれ以上悪影響を与えないために仕方なく隣に座るだけで、決して羨ましくなんて無いぞ」
「本当ですか? 怪しいな……」
恵美と西条先輩は俺と夏海ちゃんを完全に置いてけぼりにして2人で口論を始めてしまった。
徐々にヒートアップしていく2人をそろそろ止めなければならないと思い俺が声をあげようとした瞬間、夏海ちゃんが突然その場に立ち上がり俺の横に座る。
「2人とも喧嘩は駄目。パパの隣は夏海が座るから恵美お姉ちゃんは美菜お姉ちゃんの隣に座って」
「……ごめんなさい、恥ずかしい姿を見せちゃったね」
「すまない、私もつい熱くなってしまった」
小学2年生の夏海ちゃんに高校生の自分達が怒られたと気付いた2人は、ばつが悪そうな表情となり慌てて俺達に謝り始めた。
そして恵美はその場から立ち上がると西条先輩の隣のベンチシートへと移動する。
「2人とも仲直りして」
「すまなかったな、河上」
「私こそ色々と大人気なかったです。美菜さん、すみませんでした」
2人は夏海ちゃんに促されてお互いに仲直りを始めた。
どうやら夏海ちゃんが2人を止めてくれたおかげで危機は去ったらしい。
「これで一件落着、じゃあ皆んなで仲良くご飯の続きをしようよ」
「ああ」
「そうだね」
夏海ちゃんの一言で場の緊張が解けた俺達は再び穏やかな雰囲気で食事を再開し、その後は特に何事もなく過ごすのだった。
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