第15話 ユニバースランド③
フードコートで昼食を済ませてから、俺達は再びユニバースランドのアトラクションで遊び始めた。
ジェットコースターにウォーターライド、バイキングなどの絶叫系アトラクションやゴーカート、アヒルボートなどの緩いアトラクションまで満遍なく楽しんだ。
次は恵美の希望でお化け屋敷に入る予定だが、俺はめちゃくちゃ憂鬱な気分となっている。
その理由は簡単で、俺は昔からお化けがめちゃくちゃ苦手だからだ。
そのためできればお化け屋敷の中には入りたくないのだが、先程の恵美との約束があるため俺に拒否権など存在していない。
「じゃあ私は外で待ってるから、いってらっしゃい」
俺と同じくお化けが苦手で中へ入る気の無い凛花に見送られながら夏海ちゃんと恵美のと一緒にお化け屋敷の列に並ぶ。
ユニバースランドのお化け屋敷は江戸時代という設定で、怨霊の徘徊する不気味な武家屋敷を歩いて移動するウォークスルー型となっている。
自分達のペースで恐る恐る歩いていくその分、恐怖度もかなり高く、事前にチェックした口コミではかなり怖いらしい。
しばらく待って俺達の順番が回ってきたため、恵美と夏海ちゃんの手を左右につなぎゆっくりと暗い通路を進んでいく。
「パパの手震えてるけど、大丈夫?」
夏海ちゃんに情けない姿を見せたくなかった俺は強がって答える。
「だ、大丈夫に決まってるじゃん。お化けなんて非科学的なものは存在しないしな」
「本当かな? それにしては震えすぎなような気がするけど」
俺がお化け嫌いと知っている恵美はニヤニヤしながらそう話しかけてきた。
ちなみに恵美は昔からお化けが全く怖くないタイプのようで、余裕の表情を浮かべている。
そんな恵美に一言文句を言ってやろうとした瞬間、左右の障子から勢いよく複数の手が飛び出してくる。
「うわっ!?」
突然の事に俺は驚いて腰を抜かしそうになってしまう。
「わー、パパ見て見て。手がいっぱい出てきた」
「へー、結構リアルに出来てるね」
だが恵美と夏海ちゃんは全然平気そうで、怖がる俺をよそに呑気にそんな会話をしていた。
「おいおい、マジかよ。恵美はともかく夏海ちゃんも全然怖がってないじゃん、一体誰に似たんだか……」
その後も突然起きあがってきた落武者から追いかけられたり上から落ちてきた生首に驚かされるなど、俺はお化け屋敷を出るまで恐怖の連続だったが、相変わらずに恵美と夏海ちゃんは全く怖がっていなかったらしい。
「お化け屋敷、思ったよりも怖くなかった」
「アドベンチャーランドってところのお化け屋敷が廃病院って設定で結構リアルだから怖いらしいよ。また行ってみたいね」
外に出て完全に燃え尽きている俺のそばで恵美と夏海ちゃんはそんな話をしているのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そろそろいい時間だし、最後に観覧車へ行こうよ」
「もうこんな時間か。楽しいと時間が経つのはあっという間だな」
家に帰る移動時間などを考えると、そろそろアトラクションに乗るのは最後になりそうだ。
俺達4人はライトアップされた道歩きながら観覧車へと向かい始める。
そして観覧車に到着した俺達だったが、特に待ち時間なくゴンドラへ乗り込む事ができた。
「ユニバースランドって上から見たらこんな感じなんだ」
「ジェットコースターとかウォーターライドがライトアップされてて綺麗ですね」
「パパ、メリーゴーランドも綺麗だよ」
「ああ、そうだな」
俺達4人はゴンドラの中でそんな会話をしつつ、外の景色を眺めている。
「今日は楽しかったね。まさか和人君達と一緒に回る事になるなんて夢にも思って無かったけど」
「それはこっちの台詞だよ。朝も言った気がするけどまさか恵美とユニバースランドで会うなんて予想外だったし」
「和人君と遊園地で遊ぶのは本当に久しぶりだったけど楽しかったよ、ありがとう」
「どういたしまして。俺も恵美と一緒で楽しかったよ」
目の前に座る恵美からの感謝の言葉に対して俺はそう返答した。
お互いに感謝の言葉を述べた後、俺と恵美がしばらく2人で見つめ合っていると隣に座っていた凛花がニヤニヤした表情で口を開く。
「お兄ちゃん、恵美さんと黙って見つめ合うのはいいけど、私と夏海ちゃんがいるのを忘れないでよね」
その言葉を聞いて俺は恥ずかしくなり顔が真っ赤になってしまった。
「あっ、パパと恵美お姉ちゃん顔が赤くなってるよ」
どうやら恵美も俺と同じく恥ずかしかったようで顔がほんのり赤くなっている。
「あ、暑くなって顔が赤くなっただけだから。なっ、恵美」
「う、うん。そうだよ」
そう慌てて取り繕うが、凛花はゴンドラが一周して下に着くまでニヤニヤしたままだった。
それから観覧車を降りて父さんや母さんと合流した俺達は恵美とユニバースランドの入り口で別れ、車に乗り込むと家へと帰り始める。
「今日は楽しかったな」
「夏海、遊び疲れて眠くなってきちゃった」
俺が話しかけると夏海ちゃんはそう答えており、かなり眠そうな様子だ。
「家に着くまで車の中で寝てると良いよ。運転は頑張るからさ」
「うん、分かった」
父さんの言葉を聞いた夏海ちゃんはシートを後ろに倒すと、よっぽど疲れていたのかすぐに眠り始める。
「俺も家に着いたら起こして」
そう言い残して俺もシートを後ろに倒すと、そのまま意識を手放すのだった。
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