第14話 ユニバースランド②
「夏海、次は空中ブランコに乗りたいな」
「2人はそれで大丈夫か?」
「うん、夏海ちゃんの行きたいところで大丈夫だよ」
「そうね、私も恵美さんと同じ考えよ」
俺達4人はそんな事を話しながら次の目的地である空中ブランコへと向かい始める。
「それにしてもこんなところで恵美に会うなんて本当に凄い偶然だよな」
「だよね、和人君と夏海ちゃんに似てる人がいるなと思ってたら本人でめちゃくちゃ驚いたもん」
「私も驚きましたよ、まさかユニバースランドで恵美さんに会えるなんて。しかも同じ懸賞が当たってるなんて凄い偶然ですよね」
ユニバースランドは地元から離れた県外にある遊園地なので、同じ日に同じ場所へ行って偶然出会うのは凄い確率と言えるだろう。
さらに、超低確率なスーパーの懸賞の同じ2等に当たる確率まで考えると、今日ここで恵美と会えたのはまさに神の起こした奇跡と言っても過言では無いのかもしれない。
「そう言えば和人君達は何かアトラクションはもう乗ったの?」
「とりあえず夏海ちゃんが乗りたがったメリーゴーランドとコーヒーカップに乗ったところだよ」
「うん、夏海楽しかったよ」
恵美からの問いかけに対して俺と夏海ちゃんはそう答えた。
「そっか。私はさっき着いたばっかりだからまだ全然回れてないし、アトラクションに乗るのを結構楽しみにしてるんだよね」
「おいおい、アトラクションが楽しみってなんか子供みたいだな」
「あっ、今ちょっと私のことを馬鹿にしたでしょ。和人君にこの間のテストの時に勉強を一生懸命丁寧に教えてあげたのはどこの誰だったかな?」
「うっ……」
子供っぽい表情で楽しそうに話す恵美の様子が面白くなってしまいついついからかってみたところ、すぐに反撃されてしまう。
俺が何も言えなくなってしまっていると、隣を歩いていた凛花と夏海ちゃんが口を開く。
「今のはお兄ちゃんの負けね」
「パパ、恵美お姉ちゃんにちゃんと謝らないと駄目だよ。じゃないと夏海怒るんだから」
「ご、ごめん」
素直に負けを認めて謝ると、恵美はにこやかな表情になって話し始める。
「いいよ、許してあげる。そのかわり後でお化け屋敷へ一緒に入ってもらうからね」
「……ぐっ、分かったよ。正直気は向かないけど入るから」
「やったー、その言葉絶対忘れないから」
余計な一言のせいで入りたくも無いお化け屋敷に行かなければならない事になってしまい、口は災いの元だと身をもって体験させられる事になってしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから少し歩いて空中ブランコへと到着した俺達だったが人気アトラクションだったため待たされる事となり、適当に4人で雑談しながら時間をつぶす。
「ようやく俺達の番がきたな」
「やったー、夏海もう待ちきれないよ」
「あっ、夏海ちゃん走ったら危ないよ」
俺達4人は係員の指示に従ってブランコに座り、少しすると空中に釣り上げられて上昇していく。
そしてブランコは空中で軸の回転とともに俺達を乗せたままゆっくりと回り始める。
「久々に乗ったけど、景色が傾いて見えるし面白いな」
これは重力は遠心方向に働くため、乗客には自分自身が傾いているにも拘らず、あたかも地上や見える風景が傾いているような錯覚を覚えるからのようだ。
後ろのブランコに座っているであろう夏海ちゃんは嬉しそうにはしゃいでいるようで、俺の耳にもその声がはっきりと聞こえてくる。
しばらくブランコが回った後地上に降りてアトラクションの外に出ると夏海ちゃんは興奮気味に話し始める。
「めちゃくちゃ楽しかった」
「だよね、私も楽しかったよ」
「結構高かったけど夏海ちゃんは怖くなかったの?」
恵美と楽しそうに話している夏海ちゃんに対して凛花が質問を投げかけた。
「うん、全然怖くなかったよ」
「そう、それなら良かったわ」
「それで、次のアトラクションはどれにしようか?」
俺が楽しそうに雑談している3人に対してそう問いかけると、ガイドブックを見ながら悩み始める。
「……まだちょっと早いけどお昼にするのはどうかな? 結構混みそうだから空いている今のうちに行くのも有りだと思うんだよね」
「……なるほど、確かに。2人はどう思う?」
俺個人としては恵美からの提案を内心で悪くない案だなと思いつつ、一応夏海ちゃんと凛花に確認の言葉をかけた。
「今日は起きるのも早くて朝ごはんも早かったから私は賛成よ」
「歩いたらお腹空いて来たし、夏海も賛成」
どうやら全員お昼ご飯を食べる事に対して賛成のようだ。
「じゃあとりあえず次はお昼ごはんで決まりだな」
「ご飯はフードコートにしようよ。そこなら自由に色々と決められるしさ」
「そうだな、そうしよう」
ユニバースランド内には食事できるレストランが複数箇所にあるわけだが、恵美からの提案でフードコートへ行く事が決定した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます