日曜日だけはデレてください(強制)
星色輝吏っ💤
パンツはズボンを脱いでから
「くぅ~、また負けた……」
僕はゲームをしていた。アクションがすごく面白くて、僕が一番はまっているゲームをしていた。
「やっぱみんな強いなぁ。CPUにも勝てないのにPVPは早すぎるよね」
僕はいつもCPUとしか戦っていない。このゲームには面白いシナリオのストーリーが含まれていて、オンライン対戦をしなくとも、十分に楽しめるのだ。でも――
「このキャラかわいいな」
成績が滅茶苦茶悪くて頭の悪い僕には、キャラを眺めるくらいで精いっぱいだ。
CPUにも勝ったことがない。つまり、ストーリーが全く進まない。キャラクターも増えない。1体のみ。時々友達が来ることもあるけど、その時は対戦がメインになる。僕を負かして、僕をあざ笑って、ストレス発散したいのだろう。僕はもうだれも家に入れたくない。
本当に僕のこと、友達としてみてくれているんだろうか。
「はぁ……一回くらいは勝ってみたいけど、それもまた夢のまた夢」
僕にとって夢幻とわかっていても、このゲームを続けるのにはちゃんとした理由がある。
まず。動画配信サイトでこのゲームの実況配信を見るのが楽しいので、自分でもやってみたい! ってなるってのが一つ。
そしてもう一つが…………僕の頭が悪いからだ。
僕実はこのゲーム、配信見てる分には楽しいけど、自分でやっても何が面白いかわからない。同じキャラとなんでも戦って、全く面白さを味わていない。そんなの飽きるにきまってるだろう。
頭では分かってるのだが……なんか勢い出続けちゃってるんだよなあ。
友達はみんなこのゲームやめてくけどなんか……勢い出続けちゃってるんだよなあ。
このゲームの実況をする人も少なくなって、今にもオンライン対戦の需要がなくなりそうな状況なのに、勢いで続けちゃってるんだよなあ。
助けて誰か。誰か金縛りを解いてくれ。危険な薬物デモもあられたのかな?
もう嫌だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………
――ピーンポーン。
そんなことを考えていると、呼び鈴が鳴った。
「こんな時間に誰だよ」
まだ深夜2時くらいだろ――
「――ってもう8時じゃん!?」
あれ、時間の感覚が……。
「起きてシンジ! 学校!」
「……………………はっ!!」
そうだった。学校だ。遅刻だ。やばい。学校と言えば、遅刻だ。
はやく行かねば……ねばねば……ねばねば? ――そうだ納豆‼ あっ、昨日納豆買うの忘れてた! 今日食べようと思ってたのに‼ よし、今すぐ買いに――――
「シンジ‼ 何してるの学校‼ 起きたら学校‼ これ常識‼」
「はっ!」
そうだった。名前も知らない誰かの声でやっと思い出した。
こんな時のためにメモ書きしたんだった!
えっと……どこに置いたんだっけ…………あった!
えっと……ふむふむ…………めねらうすの……じょうぎ? ……なんだこれ。……あ! これなんかの教科の教科書だった……!
……あ! そうだった。メモ書きは自分のお腹に貼ったんだ。
「えっと……うっ、見にくい……どうすれば?」
小さい文字で書いてあるメモ書きは、よく見えない。しかも、お腹に貼ってあると、文字が逆で読みにくいのだ。
「……あ!」
僕はやっと気づいた。
「僕って天才!」
……僕は天才的な発想で、『紙をはがす』ことを思いつく。
そして僕は紙を見る。
『起きる→学校
└――学校へ行くためにすること:着替え→カバンを持つ
→遅刻』
「えっと……『起きる』の次は学校か……よし! 学校へ行こう!」
玄関を通りドアを開ける。(←もちろん裸足)
「ねえシンジ、着替えないの? 昨日と同じ服だよ? どうせ洗濯することとパジャマ着るってことを忘れたんだと思うけど。もう……せっかく私がパジャマ買ってあげたのに、絶対一回も来てないでしょ」
「そうだったああああ! ……って、あんた誰?」
「誰ってひどっ⁉ そんなことも忘れたの⁉ 私の名前は――」
――バタンっ!
僕は勢いよくドアを閉めた――が、まだドアの向こうの誰かさんの声は聞こえる。
「ねえちょっと! いきなり閉めるとかひどっ! ……カバンは? カバンないと学校行く意味ないよ」
……そうなのか。カバンがないと学校行く意味ない理由はちょっと僕には難しくてわからないが、いろいろと教えてくれる誰かさんが言うのだから、きっと本当にそうなんだろう。
「ねえシンジ、聞いてる?」
「そういえばさっきからシンジシンジ言われてるけど、シンジって誰だっけ? 僕の名前? 僕の名前って、シンノスケとかじゃなかったけ? ……まあいいや。そんなの後でいいし」
・・・・・・・・・・・・・・・。
「で、何の話してたっけ?」
全部忘れた。
「あんた忘れっぽいのにも限度が――」
「……あ、外に誰かいる」
ドアの外に誰かいるようだ。中に入る気なのか?
俺は優しい男だから、開けてあげよう。
「どうぞ。お入りください」
「どうぞじゃないわ! 着替えはどうしたの? き・が・え!」
「着替え? 何のために?」
「学校行くには着替えなきゃいけないよ」
「はっ。俺はそんなの信じないぞ。今初めて会った奴なんかに騙されるもんか」
「……今初めて会った? そう言ったわよね? 何言ってんの! 私たちは幼馴染でしょ。ずっと一緒だったでしょ! だから私が起こしに来てあげてるんだしっ。もう知らないシンジなんか!」
「シンジ? 誰のことだ?」
「は? あんたもしかして自分の名前も忘れたの?」
「……いやいや。さすがに自分の名前を忘れる馬鹿がこの世にいるわけ…………はっ⁉ 俺の名前なんだっけ⁉」
「はぁ……まあとにかく、着替えとカバン! ……OK?」
「そんな一気に言われても俺には分らん」
「はぁ……あんた二重人格なの? 途中から一人称変わってるし……」
「は? 何言ってやがる? 難しいこと俺に言われてもわっかんねえぞ」
「ヤンキーか何かか、あんたは」
ヤンキー……? 俺がヤンキーなわけないだろう。俺はただちょっと頭が悪いだけだ。
「はい! 今から言うことをするのよ。……着替え!」
「どこから脱ぐ」
「好きにしてそして絶対に私に見せないで」
「分かった。じゃあパンツから脱ぐ」
「パンツって……下着のことよね? あんたズボンはいてるのにどうやって下着から脱ぐのよ」
「ズボンはいてたらパンツ脱げないのか?」
「当たり前でしょ」
当たり前なのか。知らなかった。
「じゃあ着替えてくる」
ガチャ。俺はドアを閉めて、玄関までくる。
――10分後。
――20分後。
「シンジ!」
誰かの呼ぶ声がする。誰だろう。
ガチャ。
「誰ですか?」
「はっ……誰ってあんたもしかして……また人格変わった?」
「人格……あなたは何を言ってらっしゃってるのでしょう」
「その気持ち悪い喋り方……馬鹿なのは変わらないのね……いっそ頭の中丸ごと変わっちゃえばいいのに」
ちょっと何を言ってるのかわからない。私は…………誰だっけ? ここはどこだっけ。たぶん自分の家だけど。この美しい女性は誰? 謎は深まるばかり……。
「ねえあんた」
「? はい。なんでしょう……?」
「私着替えてきてって言ったわよね?」
「? 言ってらっしゃってる意味が分かりません」
「その言ってらっしゃってるっての気持ち悪いからやめて」
「気持ち悪い……いいお言葉ですね」
「あんた、いつからドMになったの?」
ドM…………なんだろうそれは。私は正直に感想を述べただけなのに。
「今すぐ着替えてきて」
「はい」
ずるずる……。
「ここで脱ぐなあ!」
――バタン。
美しい女性が顔を赤らめて、私を家の中へ押し込めた。
着替え……と言っていたけど、どこから脱げば……。
「まずパンツから…………あれ、脱げない⁉」
「パンツはズボンを脱いでからっ!」
「はい!」
――――――――――――
次回:えんじゅえる?
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