第6話 「オッキー視点」・「北海視点」

オッキーこと北海は憤慨していた。

同時に北海ことオッキーは憤慨していた。


自分達・・・いや、自分の小説が全く世間から評価されていないのだ。


ただし、例外はあった。

オッキーは北海から評価されていた。

北海はオッキーから評価されていた。


しかし、それはあくまで自己評価に過ぎなかった。


なぜなら、オッキーと北海は同一人物だったからだ。


オッキーは自分のスマホから。

北海は自宅のネット回線を使ってパソコンから。


それぞれお互いの作品の応援ボタンを押していた。


オッキーは鈴木すずきまこと

北海は鈴木誠。


鈴木誠がそれぞれ自作品を半々に分け、オッキーと北海に相互の応援をしていたのである。


始めはそれによってランキングが上がれば読者の目にも止まりやすくなり、自然と他の読者もついてくると思った。


しかし、なぜか誰も鈴木の作品を読まないのである。


次に鈴木が取った行動は無差別応援。


他のユーザーの作品をろくに読みもしないで、応援スタンプを押したり、「良いね!」とか「面白い!」とかどんな作品にでも通じる様なコメントを投稿した。


それによって応援された側は鈴木の作品に興味を持ち、フォローする人間が増えると思ったからだ。


しかし、無差別応援により閲覧数こそ一時的に伸びるものの、誰も鈴木の事をフォローしなかった。


そう、オッキー及び北海こと鈴木の小説は、ビックリするほどダメダメであったのだ!(驚愕の事実)


神奈川が盗作疑惑をされている件をカクプラ内のブログで言い始めた時、鈴木はたまたまその記事が目にとまって、読んでみた。


「イケメン転生」も試しに読んでみた。

ふと鈴木は思った。


アレ?

この話、どっかで読んだ事無いか?


思い出せそうで思い出せない。


いや、それよりもこの件を利用して、神奈川に自分の作品読ませる様に誘導できるかもしれない。


そこで、鈴木はオッキーには神奈川の擁護的立場を取り。

北海には神奈川に批判的な立場を取り。


硬軟こうなん織り交ぜて神奈川の籠絡ろうらくを企んだのである。


だが、神奈川は鈴木の作品を応援に来る気配が無い。


ならこの企みは終了だ。


そう思い、もう一度だけ、神奈川の作品を見てみた。


神奈川の作品は基本的に短編。

よく見ると神奈川の最初の応援者は、奈良と言う人物だ。


今度は奈良の作品も見てみる。

短編集でその全てがBL物だ。

その全てに神奈川の応援コメントがあった。


ふと疑問に思い、神奈川と奈良のユーザー名に着目してみる。


あ・・・。


鈴木は疑問が疑惑へと変わり、そして確信となった。


神奈川は盗作だけじゃない。

もっと別の罪も犯している。


それは鈴木だからこそ思いついた「仮説」であった。

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