恋してしまった遭遇(エンカウンター)と虚構(フィクション)

星色輝吏っ💤

プロローグ

 深い闇の中。俺の手と顔が、柔和にゅうわな感覚で埋め尽くされる。


「きゃっっ! 何してんのよ!」


 暗い。それよりも眠い。昨日は夜更かししていないが、今日が学校というだけで、眠たい気がしてくるのだ。


 ――もにゅ。……何だろうこの感触は。自分の手が、無意識のうちに動く。そして、俺の表情も普段とは違うものに――


「顔キモイわ! それに何私の胸揉んでんのよ」


 恐怖をも感じさせる、金縛りのような暗闇。それから、俺にとっての理想の大きさの、豊満な果実。


「すばらしいおっぱいだ――」


「死ね!」


 ………………殴られた。


 俺が顔をうずめていたのは、おっぱいだった。


「このごみ屑が」


「じゃあなんで来たんだよ」


「そういう約束じゃん」


 たおやかな……いや、明らかに俺を嫌っているだろう彼女は、俺の妹でも幼なじみでもない。昨日会ったばかりの、おっぱい(ニヤリ)――じゃなくて、ただのクラスメイトだ。


「何にやにやしてんの!」「――グホッ!」


 俺は逆らえない欲望に屈して、まだよく知らない彼女に、殴られるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る