第9話 EU独自の軍事同盟を

 NATOはソ連の崩壊、冷戦の終結でその存在意義を失った。しかしNATOはアメリカの世界戦略である。加盟国のほとんどに基地を持ち、いつでも派兵できる。手放す筈がない、新たな戦略概念を作り、脅威対象として周辺地域における紛争を挙げ、域外地域における紛争予防および危機管理に当たるととした。


「ある兵士の独り言」

ベルリンの市内鉄道の中で奇妙な兵士を見た。ドイツ連邦軍の深緑の軍服を着て、そりあげた頭に兵隊帽をかぶっていた。顔色は青かった。頬がコケ、やつれた印象だった。目は尋常ではなく、瞳孔をが開き、絶えず瞳を動かして辺りを見渡し、一点に集中したかと思うとまたきょろきょろとハエを追うように目を動かしている。何より奇妙なのはずっとしゃべり続けていることだった。口の中でもごもごと聞きずらい言葉を発するかと思うと、途端に誰かに訴える口調で明確な発言をしたりした。わたし(著者日本人)は耳をすませた。「昨日サラエボに行ったドイツの兵隊が二人死んだんだ。明らかに無駄死にだった。こんなこと理解できるか、この不条理が、サラエボトドイツ人に何の関係があるんだ。ドイツ連邦軍がボスニア・ヘルツェゴビナに介入して何になるんだ」ー世紀末ベルリン滞在記・加藤淳の一節から


 私は、ソ連崩壊時に論議された、欧州軍事同盟になって、NATOから抜けた方がいいと思っている。EUが将来政治統一を目ざしているのなら尚更である。EUに取ってNATOに留まるメリットは核の傘だけである。それによってEUの外交はアメリカの縛りを受ける。核の傘から抜けてEUはEUの考えで独自外交をやった方が、ロシアを含めてヨーロッパ全部の安定と平和に貢献できると思っている。

 アメリカの先の二つの大戦に果たした役割は高く評価(原爆投下は除く)すべきとと思っているが、1945年以降のアメリカ主導の戦争は評価できるものは少ないし、成功したものもないと思っている。

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