テスト勉強

星ぶどう

第1話

 あと3日、俺史上最大のピンチを迎えていた。それはテストというとてつもなく大きな壁が近づいているということだ。今俺は自分の部屋の椅子に座って、机の上に並べた教材を見つめている。今からテスト勉強を始めようとしているところだ。ちなみに本当に今から始めるところ。

 俺は今まで全く勉強をしてこなかった。言い訳をさせてくれ。今回は仕方なかった。テスト2週間前から俺の好きなアニメとコラボイベントをやったスマホゲームの運営者が悪い。俺はゲームに夢中で勉強どころではなかった。というわけでちょうどイベントが昨日終わったから、今日からテスト勉強を始めることにした。

 だが始めるにもあと3日。今からやったところで赤点は避けられないだろう。だったらいっそ諦めてゲームをした方が時間は有効に使えるのではないかと俺は思った。しかし今回のテストはいつもと一味違う。赤点を1科目でも取ったら夏休みの補習に参加しなければならなくなるのだ。

 だから史上最大のピンチなのだ。夏休みに学校など行きたくない。何がなんでも赤点を回避せねば。

 俺は早速英語の教科書を開き、テスト勉強を開始した。今の時間が夕方5時30分。寝る時間を12時だとして夕飯と風呂の時間を抜いたら6時間はできるか。

 俺は集中して英語の勉強をした。だが俺はあまり頭が良くないので教科書の内容を理解するのに時間がかかり、また範囲も広かったので6時間かけて4分の1しか進まなかった。これはまずい…。他にも国語や大嫌いな数学もあるのに英語だけで1日が終わってしまった。しかも半分しか進んでいない。時間がない。このままではテスト当日に間に合わない。どうしよう…猫の手も借りたい気分だ。まあ実際猫の手を使っても覚えるのは俺だから何の役にも立たないと思うが。はあ、複数の教科を一気に勉強できたらなあ。

 そう思った瞬間、俺の部屋の押し入れが光り、中からドローンの様なものが出てきた。

 「オメデトウゴザイマス。アナタハミゴトミライノアイテムムリョウオタメシキャンペーンノトウセンシャニエラバレマシタ。イマナニカカナエタイオノゾミハゴザイマスカ?」

 「は?ノゾミ?意味分からねえよ。てかお前何?どこから来た?ていうかしゃべんの?」

 「ナニカオノゾミハゴザイマスカ?」

 「シカトかよ。まあ強いて言えば、テスト勉強を手伝って欲しい。同時に複数の勉強ができるとか。」

 「ワカリマシタ。デハ…、ブンシンガデキルアイテムヲプレゼントイタシマス。」

 機械はそう言うと箱のような物を部屋に置いて消えた。

 「何だったんだ。変なもの置いてったし。でも望みを叶えてくれるって言ってたよな。もうどうせ崖っぷちだし、試してみるか。」

 俺は箱のような物に付いていた説明書をよく読んだ。どうやらこの機械は人を分身させてそれぞれに違うことをさせることができる。そして元に戻すとコピーが行なった経験がまるで自分がやったようになるというものだ。例えばコピーに筋トレをさせて元に戻せば、自分は筋トレをしていないのに疲労感や筋肉が少しついたりしているということだ。

 スイッチを入れるとその機械から俺に向かってビームが出て、気づくと俺が5人になっていた。これだけいれば一気に5科目をやれる。これなら何とか間に合いそうだ。5人の俺は早速テスト勉強を始めた。同じ部屋で自分がたくさんいるのに違和感があったため、オリジナルの俺だけリビングで英語を勉強した。

 テスト前日、俺は5人に分身していた俺を1つに戻した。結局英語は範囲のところは一度目を通したが、完璧に理解はできなかった。だが赤点は何とか回避できるだろう。残りの4人の俺もしっかり国語、数学、理科、社会をやってくれたはずだ。

 テスト当日、俺は俺を信じテストに臨んだ。出来栄えとしてどの教科も良くないと思うが、赤点はきっと回避できているだろう。

 テスト返却の日が来た。俺のテストの結果は…、数学だけが赤点だった…。なぜだ?コピーの俺がしっかり勉強をしなかったのか?

 俺は家に帰り、もう一度あの機械の説明書をよく読んだ。するとこういう注意事項が書いてあった。分身の自分は自分と性格が似ると。つまり数学が大嫌いな俺の性格をコピーの俺が持っていたせいで真面目に勉強をしなかったのだろう。

 トホホ…。やっぱりもっと早めから勉強を始めていれば良かった。夏休みには数学地獄が待っている。

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テスト勉強 星ぶどう @Kazumina01

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