第24話 目覚め ◇Day 3

ペチペチペチペチ


ペチペチペチペチ


ペチペチペチペチ


「ん、んん」

「神官長、目覚めました」


 なんだ?デジャヴ?

 頬の刺激が以前と全く違い心地よい刺激だが…


「な…?」

「E、ご苦労様です。BBさん、おはようございます」

「あれ、Fさんですか?ここは?」


 目を開くと俺の左にE、右にFが立っている。どうやらまた意識を失っていたようだ。

 

「ここは教会宿舎の奉公人部屋です、昨晩半裸の男性に担がれて運ばれて来たんですよ?覚えてませんか?」

「あぁ…そうなんですね、運ばれる前に治療されたのは覚えているんですけど、ご迷惑おかけします」


 半裸の男性というのはたぶん状況から考えるとシトロさんの事だろう。シトロさんは教会の人達とは面識がないのだろうか。


「なるほど、それで全裸だったのですね。Aに頼まれて運んで来ただけと言われまして、とりあえずここに運んで貰ったんですが」

「ぜ、全裸!?下着履いてませんでした!?」

「履いてませんでしたね」

「それは…見苦しい姿を晒して申し訳ないです」

「神官長、彼を運んできた男がそれらしきものを腰に吊るしていた気がします」

「そんなバカな…でも治療してもらった時にひょっとしたら…忘れて?」


 とにかく下着は手元に無さそうだ。こっちの世界に来てからというもの人に迷惑しかかけていない気がする。もっとこちらの世界に早く順応しないとあまりに惨めだ。


「BBさん、昨日何があったのか話して貰えませんか?Aに聞こうとしても昨晩から黙秘を続けていて分からないのです」


 俺は簡単に昨日の奉仕任務の内容とその過程を二人に話した。


「なるほど、BBさんの全裸を見た事でAはストレスを抱えたようですね。原因はA本人にあるわけですが」

「そうですか?私にはEさんにかけてもらった強力な支援魔法が原因な気がするのですが」

「そこは考え方次第です。Eの支援魔法で任務達成したようですからね、Eはむしろそう思われてしまうという理由で被害者ですよ。そもそもBBさんへの奉仕任務が力量の範囲で達成可能なものに設定していれば全裸を見る結果には繋がらなかったのですから」

「あぁ…まぁ、そうなりますね」


 てっきり俺の能力不足が問題だ、という話になるかと思ったが、なんだか優しい対応で拍子抜けする。


「詳細をありがとうございます。理由がわかりましたのでひとまず私は普段の仕事に戻ります。BBさんも体調が問題無いようならAの元にでも行ってみて下さい。E、後は任せました」

「はい、神官長」


Fはそう言い残して部屋から出て行った。


「BBさん、昨日預かった衣服ですが、あまりにも汚れていたので洗っておきました。靴はベッドの足元に置いてます」

「そんな!スミマセン!ご迷惑ばかり!てっきり魔法をかけてもらう対価として譲渡したものだと思ってました」 

「確かに高価そうな衣服ですが、私は追い剥ぎではありせんから」


 Eは当然のように綺麗に畳んだ衣服を差し出してきたので慌ててベッドから上半身を起こす。その拍子にかけられていた布がずり落ち、上半身裸であることに気付いた。


「気をつけて下さい、貴方あなたはまだはだかです」

「は、はい、スミマセン」

「それでは私の用も済みましたので、後はご自由に」

「あ、ありがとうございました!」


 Eに向けて頭を下げる。


「…気のせいかしら、昨日と肉付が?」


 気になる事を呟かれたので頭を上げるが既にそこにEの姿は無かった。


「肉付?」


 俺はひとまず身体の状態を調べる事にした。


 左腕には以前切断された傷跡が2箇所。

 他は特に傷も無く、シトロの言っていた重症の肌の跡は全く無い。回復魔法、なんて便利なんだ。


 腕の傷跡の事から考えると一度完治している傷跡は治癒魔法では治らないようだ、あくまでに負傷部位に作用して治すわけか。


「それにしても」


 なんだろう、腕が筋肉質になっているのか?鏡がないのでなんとも良く分からないが、以前より力こぶが大きい気がする。


 そういえば支援魔法をかけて貰う前に何度も俺はあるワードが頭に浮かんでいた。ええと、確か【⁺能力上昇】こんな感じだ。


 支援魔法をかけてもらってからはまるで見えなかったが、このワードが浮かぶときは身体に何らかの負荷がかかっていた時だったと思う。ゲームで例えるならレベルが上がったと捉えるべきなのかもしれない。


 俺が神に願った恩寵を思い出しながら、力こぶを見つめながら俺はニヤける。

 

 【取得経験値増加】

 【能力限界値突破】

 【オーバースキル】


「俺は目に見えて成長できるのか」


 そう思うと俄然やる気が湧いてきた。


「よし、ひとまず服を着て師匠マスターを探そう」


 洗濯された衣服が心地良く、心なしか衣服が若干

大きく感じられる。


「身体が引き締まったからか?それと、なんだろう」


 洗濯とは違う何だか良く分からない良い匂いがした。


――――

―――

――

 

「…それにしても、あのシャツの質感。なかなか良かった…。返さなかければ良かったかしらね」

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