第15話 初めての奉公人
もしかしてイメージしていた奉公人とまるで違うんじゃないかと思いつつ、Aの宿舎案内が終った。
「以上が宿舎だ、何か不明な事は?」
「え?二階の案内は無いんですか?」
Aに案内された宿舎は、玄関、通路、一階左手のキッチン、一階右手のベッドが8台並んだ奉公人の部屋のみだった。
通路奥の階段から続く2階を案内されていない。
「呼び捨てにするな、
「いやいや、呼び捨てになんてしてませんよ」
「エ、と言っただろう?」
「あぁ、それは言いましたがそういう意味では」
「人が聞いて誤解を招く発声は許可できない」
「う、すみません
それで、二階の案内は無いんですか?」
しばらく『え』は禁止だな。
「二階は神官長の個室に私の個室、あとは孤児達とシスターの部屋になっている、BBが使うことは無いだろう」
「孤児もいるんですね。孤児達の世話は?」
「それは奉公人の仕事ではない、シスターが務める。良し、次は外に行くぞ」
玄関に向かうAの背中を追いながら質問する。
「俺を孤児達やシスターへ紹介したりは?」
「出会った時にすれば良かろう」
「…
「主に警備だ、そして奉公人の指導」
「…俺が初めての奉公人みたいな事呟いてませんでしたか?」
「聞こえていたか、その通りだ。
年に数回奉公人を得る機会を神官長より貰っていたんだが、全員テストで不合格だったのだ」
「
前を行くAはピタッと立ち止まり、振り向き様にギロリと殺気立った上目遣いの視線をよこす。どうやらAのプライドを傷つけたようだ。
「合格の基準は逃げない事だ。
一撃を受ける、治療される、最後に残れば良い」
「え、そんな簡単な事なのに不合格に?」
Aは俺と距離を一歩詰める。
「歯ぁ食いしばれぇ!!」
「ゴフゥッ!!」
間髪入れずに、強烈な一撃を腹にくらった。
「呼び捨てにするな、
呼び捨てにしたければ努力するんだな」
膝から一瞬崩れ落ちるが、気持ちでなんとかすぐに立ち上がる。強いとは言え補助魔法で強化されてないAは日本で言えば年齢的に女子高生、まだまだ子供だ。気持ちで子供に負けるわけにはいかん。
23歳も歳下だぞ!?
⁺能力上昇
「はい、
しかし、殴られた理由はそこか。簡単な事と言ったのが機嫌を損ねた理由かと思った。
ということは、最初に注意した時は殴らなかったのだから割と優しいのかもしれない。
『え』が口癖になってるから早く何とかしないと。
「BB、お前はあの試験と今の理不尽な暴力から、逃げたい、逃げようとは思わなかったのか?」
Aは玄関に向かいつつ俺に問う。
「…逃げたいというより、
「そ、そうか」
Aが何かソワソワしている気がする、前に居るので良くわからないが案外てれているのかもしれない。
しかし、今思えば虫の知らせみたいな胸騒ぎだったのではないかと思う、きっと殺気を感知したんだろうな。
「不合格だった人はどんな風に逃げたんですか?」
Aは玄関から出て教会の前で立ち止まった。俺の方を振り向いたので条件反射で腹に力をこめる。
「私が腕を折った奴は治療が終わる前に話も聞かずにすぐに去った、足を折った奴は治療が終わると準備したい物があると言って戻ってこなかった」
パンチは飛んで来ずに、感傷的でどこか寂しげな上目遣いを向けられている。
「な、なるほど」
「…最初の奴は治療が間に合わずにあっちに埋まっている、私もまだ若く力の加減が分からなかった。彼には悪いことをした」
Aは視線で方向を示す、おそらく先に墓地があるのだろう。
「BB、お前が死ななくて良かった」
いやいや!なにその雰囲気!
大戦を生き抜いてくれて感動の再会…!!
みたいな話じゃないですから!
殺しにかかってるのはあんたの殺人剣ですから!
「は、ははは、
「それもそうだな」
どの言葉かわからないが急にスイッチが入ったようで、もとのAに戻った。
「それで
「BB、神官長から説明を受けていないのか」
「なんとなく雑用をするのかと思ってたんですが」
「それはそうなんだが、少し違う。一言で分かりやすく言えば私の奴隷だ」
「?!」
危ない『え』を言うところだった。
「奴隷!?」
「言葉が悪かったな、まぁいい、詳細を話そうか」
「お、お願いします!」
奉公人とは一体!?
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