第14話 A



「それでは、はじめッ!!」


 ちょっと神様といいFといい、説明が少なすぎやしませんか!とりあえず全力で守るしかない!

 

 Aは両手持ちの棒を真上に掲げて何か小声で呟いている。

 俺はAの動きに対応しようと両手で棒を中段に構えた。高校の授業で習った剣道、役に立つのか?


「―――――全能力上昇!!オールステータスアップ

 

 Aが何か叫ぶとAの身体が白い光に包まれる。

 なんだ?まさか、補助魔法?


「覚悟!!!」 


 Aの動きは異常としか言えなかった。

 10歩程の間合いがたった3歩で詰められ、上段から袈裟斬りの気配。


「イィヤァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!!」


 ちょ、まさか示現流ジゲンリュウかよ!?

 初太刀に全てをかける剣術がこの世界にもあるのか!?


 Aの素早い太刀筋はまるで見えない。

 袈裟斬けさぎりなら狙いはこの辺りだろうと腰を落とし、おおよその検討をつけて棒を上段に構え頭と肩を守る。


ガンッ!!!!!


 間一髪、棒を構えた途端両腕に激震が走り勢い良く棒が叩き落とされた。


「コイツッ!!」


 苛立つAの声。鋭い眼光には殺気が宿っている。

 Aは振り下ろした棒をそのままに頭から突進してきた。体当たりされるのかと思い俺は腕を前で構えて衝突に備えた。


 !?


 Aの身体が目前で急停止し、斜めにヒネられた。


 下段から大きな弧を描いて棒が迫る。


 防げ――――






ペチペチペチペチ


ペチペチペチペチ


ペチペチペチペチ


「ん、んん」

「神官長、目覚めました」

「思ったより早かったですね」

「私の処置ビンタが心地よかったのかと思われます」

「なかなかの腫れ具合ですがそこの治療は?」

「頬は問題ありません」

「すびばぜん、俺の身体どう?」


 痛む頬、無表情のA、にこやかなF、青い空。


「BBさん、Aの一撃を防ぐとはやりますね」

「実戦なら即死でずがら」

「当たり前だ、私の剛剣がお前如きに止められるわけがない」

「A、やはりBBさんの頬の完治を頼みます、会話しにくいので」

「軟弱者め、感謝しろ」

「ばい」


 Aは両手で俺の両頬を挟む、顔が向き合っているので自然と目があう。鋭い眼付は相変わらずで、俺も真剣に見つめ直す。ドキドキしない、何故だ?


「――主よ、生きとし生けるものを救うために神の奇跡を授けたまえ、傷付いたこの者に慈悲を与え一時の休息を与えん、治癒ヒーリング


 頬の痛みが急にひいてきた。やはり詠唱をしてから魔法は発動するようだ。しかし、なんて便利な力だ、是非とも覚えたい。


「どうだ、治してやったぞ」

「ありがとうございます!」


 聖職者としてその態度はどうなんだと思わないでもないが、この世界の聖職者がそもそもこういうものの可能性もある。


「本当に私より歳上の癖に頼り無い、まぁ私がそれだけ優れているから仕方がない事だが」

「恐れ入ります!」

「BBさん、テストの結果としては問題ありません。腕と脇腹の痛みは残っていませんか?」

「たぶん大丈夫です!」

「神官長、私の治癒は完璧です」

「そうですね。BBさんもAの実力がこれで痛い程分かったと思いますから、親子ほどの歳の差になるとは思いますがAを師として奉公人を務めて下さい」

「わかりました!ありがとうございます!」

「それではA、後の案内を頼みましたよ」

「任せて下さい」


 Fは俺達を残して教会の中へと戻っていった。


「私の事は師匠マスターと呼ぶように」

「はい!師匠マスター!」

「ふふ、ついに私にも奉公人が…

 良し、まずは宿舎を案内する!付いて来い!」

「はい!師匠マスター!」


 あれ、なんか、軍隊っぽくないか…?

 奉公人?んん?

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