第7話 B B
川から素材屋へ向かう道すがら、俺の緊張を和らげるため積極的に話をした。
蛙達と一緒に行動しても先程のように周囲からの警戒した目で見られる事はなく、この世界ではヒト型の蛙は自然な事のようだ。
また警戒させていた俺の顔も大蛙の放水効果でスッキリしている。シャツは完全に色落ちしてなく全体的に汚い感じのままだが、真っ赤に染まってないだけ余程ましだ。
しかし多種族がいるとは聞いていたが、まさか亜人とは。どこまでもファンタジーの世界でベルフェの言葉通りだと実感する。脳内で『筋肉イケオジ』『ツンツン美少女』の親子設定に変換したおかげで、川では緊張して上手く話せなかったが普通に会話ができるようになった。
「ナルホド、
「ヒトよ、
大蛙はそう言って街外れの一角にある店舗を指さした。
【
「店主よ、入るゾ」
「入るゾ、入るゾ」
「失礼します」
商店のドアは開け放たれており声をかけて入室を知らせる。素材屋というだけあり、何に使うのかさっぱり分からない気味が悪い物が所狭しと並べられている。
「お、
「ウワバミ、こいツは仲間ではないガ、少し縁があったノダ。このスライムの利益の一部をこいツに分けたイ」
「まあ、その辺はおいおいでいいか。まず品を見よう」
ウワバミと蛙親子は奥の部屋に向かっていくので俺も付いていく。
「それじゃま、このへんに置いてくれ」
奥の部屋は大きな壺がいくつも並んでおり、床はタイルの様な素材で敷き詰められていた。トムリンはスライムをその床の上に置いた。
「うひょ、こりゃあなかなかの大物じゃないか、苦労しただろ?」
「イヤ、こいツのパンのお陰で楽勝だッタ」
「ほう、パンか。なるほど、運が良いヤツだな、ところでアンタ名前は?」
恐るべき職人技の速さ、ウワバミは会話をしながら被膜・体液・核その他もろもろを壺の中に分別していく。また奥の壁際にはベッドサイズの穴があり、不要物らしきものはそこに投げ込んでいる。
「
「コラ、運とは言エ損害が出なかったのはこいツのお陰ダ、見た目の悪口良くなイ」
「ゴメンよ、
「ビービーよ、失礼しタ」
「ほう、珍しい名前だな、顔と身なりもちょっと変わってるとは思ったんだ」
「あ、いや、俺は」
「ほうら、喋ってる間に完了だ。
しかし見事な核だったのに粉砕してるのはもったいなかったな」
「命に勝ル宝はナイ」
「ま、そりゃそうか、他に売りたいものはあるか?」
「ビービー、お前の持ってルやつも出しテおケ」
「あ、ああ。これをお願いする。それより」
「あースライムの中の異物ね、まぁクズ鉄価格ってとこだな、ちょっと待ってな」
「あ、あぁ」
俺は勢いに圧倒されて海外出張時の事を思い出していた。馴染みの無い俺の名前は異国の地では聞き取りにくく、相手は発音もしにくい。それで結局本名ではなく呼びやすいアダ名が定着していた。
俺の名前が決まった瞬間だった。
「よし、合計出たぞ。で、どうやって分配する?」
「半々で頼ム」
「いやいやいや!半々は貰いすぎです、トムリンさん達が9で俺が1でお願いします」
「はいはいっと、それじゃま、こんなとこだな」
ウワバミは小袋に分けた貨幣をトムリンと俺に渡した。
「欲が無いのダナ、ビービー。ヒト族の癖に好感が持てルゾ」
「ビービー、偉イ!偉イ!それに比べテ、ウワバミ!」
「はは、そう言うなって。
これだけのスライムは年に一度おがめれば十分な幸運だ。どうだ、全員儲けたんだ、酒場にでもいかんか?」
「俺達ハ遠慮してオク、食料を調達シテ村に帰りたいノダ」
「家族、待ってル、ここデ、サヨナラ」
「そうか、なら仕方ないな。ビービー、俺が奢るからついてこい」
「あ、ああ、わかった」
ずっと前から腹が減っていた事を安心感から思い出した。
蛙親子と商店前で手を振り別れ、俺はウワバミと酒場へ向かった。
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