ボス戦

「もうこうなったらボス戦に挑むしかないわ」


忍者アリンは宿の1階のすみにあるテーブルで真剣に言の葉を発した。


「面白くない冗談だな。全く面白くねぇ」


盗賊キースはそう言って頼んだチーズを口に運んだ。


「冗談じゃなくそう言っているのよ!」


「オマエボスの事なんて何にもしらないだろ」


「名前はワードナ―ァHP65500~♪」



「キッドはボスを倒したのか?」


「偶然入れてくれたパーティーで倒しました~全員レベル80以上~♪」


「聞いたかアリン。こうじゃないと倒せないんだワードナは。しかもずっといるわけじゃない。レアモンスター扱いだからな」


「…」


アリンは少し考えていたが、ヒラメクように手のひらをグーで叩いた。


「合同パーティーでいきましょう!」


「なに!?」


合同パーティーとは――――――――――


目標を定めて利害関係が一致したパーティー同士でタッグを取り、最大12名で行動できる。しかしギルドのルー

ルによって1年に1回しか組めない。


「そこまでしてワードナを倒したいか」


「ええ。そりゃ最後の大物だもの。何としてでも倒したいわ!」


そう言って忍者アリンは、


「ワードナ戦合同パーティー行ける人はいますかーっ!!」


早速呼びかけを行っているアリン。行動力がすごい。


30分ほど呼びかけたがなかなか集まらない。それでも僕らは一丸となって叫び続けた。


と、アリンの後ろから肩を叩いてくるドワーフがいた。


「ワシらもついていってワードナを倒してもよいぞ」


報われた。


「倒した経験はあるんですか?」


「もちろん。じゃが条件がある!倒した際に出て来た宝箱を全部ワシらがもらう」


「あぁどうぞどうぞ!私は倒せればそれで良いんで」


ドワーフのパーティーは全員ドワーフだ。力押しの集団なわけだ。


「頼りにしてますよ」


「ザコはお前らも倒せよ。まあ12人でフルボッコすれば簡単じゃがな!」


忍者アリンはぼくらのテーブルに着き、


「見つけたわよドワーフのパーティー。20分後に行くから準備して!」


「夜だぜ?皆眠くないのか?」


「酒飲まなくて正解だったっす」


パーティーは各々の部屋へ戻っていった。


「どうじゃ。支度は済んだか?」


「ええ。ドワーフはみんな同じ職業なの?」


「ビショップも忍者もおるわい」


アリンと同じ黒服のドワーフも確かにいる。


「じゃあいきましょうか」


12名でダンジョン1階へ向かう。


ピピンがテレポートの魔法陣を作り、足早に入って行く。最後にピピンが入り、最下層10階へ飛んできた。


「ボスはレアモンスターじゃから、雑魚を狩っていくしかない。あとイベントはおぬしらは必ず死ぬからいかないように!」


僕がトーチで周囲が明るくなると、ドワーフが先陣を切ってズンズンと進んでいった。ドワーフ側もトーチをつけているので、周囲はかなり明るい。


「敵じゃ」


「レイバーロード、ザ・ハイマスター、ブラックを確認」


盗賊キースが確認した。


「12名でフルボッコじゃ!」


ドワーフを先頭に次々と敵を沈めていく。


「どんどん行くぞい」


そうやって1時間半ほどザコ狩りをして、ダンジョンの一角で休憩した。キッドは例のゼリーを飲んで補給している。さすがにしんどい敵なのか、キッドは口数少な目な状態だ。


僕もさすがにMPが厳しくなっていた。これ以上は正直ボスにあったら殺されるかもしれなかった。

キッドは草を僕に差し出した。


「なんの草ですか?雑草?」


「いいからイートしてみてクダサ~イ」


嫌悪感を感じたが食べてみると体が暖かくなり、ステータスを見るとMPが全回復してるじゃないか!キッドさんは何者なんだろう本当に。


「もうそろそろ行くぞい」


ドワーフがそう言った時だった。


バシューン!!!という音がダンジョン全体に響いた。


「とうとう現れたか、この!」


ボスが出現した合図だったのだろうか。恐ろしい音だった。


ドワーフはマラソン程度の速度でダンジョンを動き回っている。あとから僕らが付き従う。

何分かした後、輝いた物体を目にした。


「ワードナは光属性だから光属性の攻撃はやめろよ?敵のHPが回復してしまうのでな」


うちらに気づいたワードナは、こちらに浮遊してくる。


戦士ドワーフがモーニングスターを回しながら一撃を食らわせる。


ピピンが炎の玉を連続でぶつける。


ワードナは浮遊してこちら側に寄ってきた。そこでキッドがワードナの周辺に竜巻を起こさせ、愛銃のFNファイブセブンを40発全弾をボスに浴びせる


騎士ドワーフがフェンシングのような武器でボスを何度も刺す。


忍者アリンは毒のデバフを掛けようと吹き矢を使ったが効いてない様子で、逆にアリンはワードナのアイス系呪文で何個もつららが突き刺さる。


僕はそれをみてアリンをヒールする。


ドワーフはビショップをのぞいてフルボッコにしている。


そうして約30分後――――


ついにボスは倒れた。皆、かなり疲弊している。すると経験値が相当数入り、レベルも数段階上がった。


宝箱をドワーフが開けようとした刹那。


キッドがビショップに向かって竜巻を仕掛けた。銃を撃つこともなく死亡した。


察知した盗賊キースは戦士に毒のデバフをかける。


ピピンは普通に弾をドワーフになげつけている。忍者アリンが1人の首を跳ねた。



そうしてあっけなく討伐されたドワーフを見て、


「宝箱はあてくしたちのものでぃす」


盗賊キースが宝箱を開けると、本当に大量の金貨とともに、高級そうな杖を見つけた。もしやと思って僕が鑑定すると、やはりビショップ用の最高レベルの杖だった!


「良かったなエット」


「金貨を入れるズダ袋をくれ。全部この袋に入れるからよ」


そうしてピピンの魔法陣で皆1階へ向かっていった。


装備を売り、何か月も泊まれる金貨を手にした僕たちは宿で休憩する。


「やっと制覇したわ!」


忍者アリンは嬉しくてたまらない謎ダンスを披露した。


「そのポジティブな思考にはやられたよ、全く」


「制覇なんてとんでもないトークで~す!次の街にはブラックロックという地下15階のダンジョンがあるのですYO!1階の敵で、今日やった強い10階のモンスターが現れるゴージャス!!」


「はぁ…まーたダンジョン攻略かぁ」


「自分たちにはダンジョンしかないんすよ!」


「それはそれとして12時間以上は眠らせて下さいよ?」


はっきり言ってダンジョン攻略は、民衆には伝わらない。皆は地上の悪魔城を倒したりする者をヒーローと呼び褒めたたえられる。


それでも僕はダンジョンで成長し、ここまで来た。アリンと目が合うと満面の笑みで僕を見つめていた。



僕らのダンジョン生活は、まだまだこれからなんだ!

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