宿の食堂にて

飲めや 歌えや 水道水♪


おかしなクリスマスソングを盗賊アリンは歌っている。


メンバーは全員ギルド2階の食堂にいた。


「ごめんね~うちら今までヒーラーが居なくて、金欠でさぁ」


盗賊アリンが申し訳なさそうに冷たい水を飲む。


僕も飲んでみる。冷たくて、これはこれでいいじゃないか。


「しかし、料理がまったくないのはどうしたものか…」


「拙者は餓死がししてしまうよ全く…」


ブーブー言ってるメンバーに盗賊アリンが突っ込む。


「やっとエット君がトーチを覚えたんだから、今度は2階を回ろう!食事代ぐらいにはなるよ」


「光を見ただけで倒れる敵もいるしね!」


確実に実力が数字として表れる。これが本当、何よりも達成感を味わえるってやつだ。


「全滅したことはないんですよね?」


僕は気軽に聞いてしまったことをあとで後悔することになる。


水の入ったジョッキをドンと置くと、戦士ビットレイが重い口を開いた。


「1度5階でひどい目にあってる。ほぼ全滅しかけたが、テレポートもできず限界だった。そこでたまたま1階へ続くダストを発見し、1気に1階に戻れたんだ」


「ヒーラーがいなかった僕たちは5階までが限界だったってわけ」


マッパーピピンが元気なさそうに言った。続けて、


「でも2階なら全然大丈夫!ちゃんと完璧にマッピングしてるし」


そう言って使い込んだ感のあるボロボロのマップを広げて見せた。


忍者が、


「次はヒーリングをマックスにして貰おうか。本格的になってくるな。」


と満足げに水道水をグイっと飲み干した。


「とにかく今日は大成功!他のパーティーにも遭遇しなかったし、万事OK‼」


僕はどうしても気になっていることを聞いた。


「ピピンさんは何の種族なんですか?初めて見たもので…」


本当はどれもこれも初めて見た物ばかりなんだが、そこはひとつ棚に上げて聞いてみた。


「ピピンザンクという小さな街の地下で暗躍してるんだ。だから皆は暗闇でも視界が良くみえるわけ」


「へー。すごいですね」


「僕は地上で冒険してみたかったんだけど、結局はまた暗いダンジョンで活躍してるのさ」


「もう飲めない~…」


盗賊アリンは何故か水道水で酔っ払っていた。


とにかく明日は頑張っておいしいものを食べよう。そう決断した瞬間、お腹がぐ~っとなってしまった。

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