猫になりたい?

桝克人

猫になりたい?

 猫の手も借りたいなんて生ぬるいものじゃない。

 〆切目前になってコンテストに駄目元でコンテストに応募しようと小説をざっかざっか書いているが全く間に合う気がしない。


 そんな時に限って家の片付けは溜まっていくし、普段書きもしないTODOリストも珍しく埋められて、二週間前にぼんやり過ごしていた自分を殴りに行きたい。


 猫の手を借りたいとはこのことだろう。しかし本音を言えば『猫に代わってもらいたい!』ところである。


 猫が私の用事を済ましてくれる代わりに、猫の仕事は私がする。

 陽だまりで丸まって、しっぽをぱたぱたさせてみたりしながら、うとうとと眠りたい。「にゃーん」と可愛い声でごはんをねだりありつきたい。おやつなんかもらえれば最高だ。あれがいい。CMでやっているぷるんとしているような液状のような、ほぼ全ての猫をとりこにするあれ。人間の私にとってのフルーツゼリーだ。ちゅるちゅるしたい。

 猫とはいえ動かないと運動不足はいけない。猫じゃらしならいくらでもじゃれてやろう。うまくやったら褒めて欲しい。


 一通り猫の暮らしを満喫したら、きっと私はまた自分の体が恋しくなる。 でも、もし猫が私より優秀だったらどうしよう。桝さん、いつもより調子いいじゃないなんて、猫が褒められたら人間として生きていく自信がなくなるだろう。ただでさえ自信なんて欠片程しか持っていないのに。


 猫の手を借り、いや猫と入れ替わった結果なけなしの自信を喪失したら困るので、自分で頑張ろうと思う。


 とりあえず規定の六百字を超えたところで、一安心だ。

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猫になりたい? 桝克人 @katsuto_masu

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