『出た杭が打たれずして』

「……ここもだめかあ。

ほんの少し、期待していたんだけど……」

かつての我が家も今や空き巣にして廃屋になっていた。


「しょうがない、しょうがない」

切り替えよう、これでもう七百件目だ。

もう慣れてしまったことだし、平然と行こう。


「なーんて強がってるけどさ……

やっぱりガッカリしてるんだね、君」

「……うるさい、茶々いれないでくださいよ」


「あ~あ、いいのかな?

今となっては君唯一のつながりになっちゃった美人管理人はだーれ?」

「うる……っさいです……

ぼくは……ついてきてなんて…………一言も」

だいたい……!

美人って……人かも妖しいだろ、あなたは……!!!


「……ああ、ゴメンね、からかい過ぎたね。

大丈夫 大丈夫。

ワタシは君を一人にしない。

寂しい思いになんてさせはしないから、君もワタシを一人にしないでおくれ。

『約束』でしょ?」

ああ、もうずるい、ずるいんだ。

このひとは。


「うん…………うん……しない、ぜったい」

「ほうら、なかないなかない。

の君に責任はない。

アレは全部、君が消したアイツらのせいだよ」


彼女が言うっていうのは僕があの日見つけてしまった。

発見してしまった、オーパーツ……世界任意乖離装置。

見つけた時の彼女曰く、

「世界僕らだけスイッチ、さ」


ぼくは人という人に狙われた。

みんなみんな怖かった。

みかたなんて彼女以外いなかった。

だから、

──ぼくはおしたんだ。

それが


なんで、ぼくだったんだろう。

ぼくは、なんで押しちゃったんだろう。


さがせ、さがせ。

まだ。

僕が無くしてないものだってあるはずなんだ。

そうじゃなきゃ、ぼくは、ぜんぶ、ぜんぶ、消しちゃったことになる。

いやだいやだいやだ、だれか、だれかいないのかよ。

責めるなり許すなりしてくれよ。


だから、だから探すんだ。

みつけなきゃ、ぼくは、ただのひとごろしに、なってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る