第3話 先物取引のために、土砂降りの雨の中休まずにドティルティまで走れ!

「だってごしゅじんさまがよろこぶとおもったからぁ」


 ぐっすんぐすん泣いているアキちゃん。


「まあなくなったのはしょうがないから、また稼ご。もっと多く稼ぎたいところだけどねえ」

「ドティルティへまずいって、そこからジダン直行でしょうか。ジダンは都市そのものが国家のような場所ですよ。あの来訪人が一番最初にみる街がそうです」

「おおーあそこかー! なんかマジックパンクだったよねー」


 行こう行こう、ということで傭兵さんを整理して、移動用に見せ衣装のARチップを購入。いつものやつですな。


 さて、レクチからドティルティに行く際にある物を買った。


 小麦の先物権利である。今回は1万ドルエンで一つ購入。


 なんだお金あるんかーいと思われそうだが、もう銃が扱う基本スキルはそろってきたし、上位スキルに手を伸ばさなければならない。2丁拳銃で銃を撃つなら、両手持ちと逆手撃ちを両方取得するから2万ドルエンはかかるし、銃も必要になる。お金が一気にかかってきそうなのだ。ほかの職業のスキルもぼちぼち取るしね。


 ドティルティは今天候不順で穀物があまりとれないようだ。値段も上がっている。このレクチはまだまだ穀物の在庫があって安い。もうすでにTSSネットワークでは盛んにネット売買されているが、先物権利の現物取引はあまりされていないらしい。傭兵の皆さんが教えてくれた。現物取引がされていないと言うことは、仮想上の取引が主体ってことだよね。でも現物での取引は業者の間では盛んに使われているのだ。


 そこで実際に赴くついでに先物権利(現物)を購入をして現地で先物権利(現物)を売り払う、というわけだ。最悪ジダンに行けばここの2倍以上の値段で取引されているとのこと。輸送業者に売ればまず間違いなく売れる。ここを通過する際に権利を行使して手に入った現物を入手するからね。

 ややこしいなー。でもお金は稼げるときに稼がないとね。でもややこしいなー


 取引権利を私の左手に内蔵されているチップに取り込んで、ドティルティまでの道のりをスタート!

 先物権利には期日があって、期日以内に決済しないと自分で仮想上で売り払って権利を消失させるか、本当に小麦をレクチに手に入れる羽目になる。仮想上の取引は出来ないので絶対行かなければ。


 ドティルティまで馬車で移動。ただ、雨続きで道がだめなので途中から歩くしか無いという。


「雨続きとか、怪しいね」

「バグのかおりがします」

「まずは着くことを目標にしましょう」


 雨は予想以上にひどく、歩きなら残り3日くらいで着くというところを7日ほどかかるという。


「ここまで4日、そして到着まで7日かかる。権利期日が2週間。残り時間は3日か。最悪大将達だけで先を進んでくれよな」

「うん。悪路走破を買う。ここまでひどいとはね。レクチの在庫が動かなかったのはこのためか」


 悪路走破が一個千ドルエン(斥候の上位のレンジャーの上位、森林レンジャースキル! ホーミング付与よりも高い!!)もするのでLv3までで止め、こんな悪路でも余裕で歩けるアキちゃんを連れて一路ドティルティへ。

 泥沼の中を歩いている感じで人はいない。んだけど、沼と言えばスライムと沼魚人。

 スライムは泥水で膨れ上がって核への攻撃が当たりにくいし、沼魚人は行動速度がレベルアップしてる。


「ショットガンの氷属性散弾! スライムが凍った!」

「行きます! 桜花打開!」

 体をひらくようにして裏拳をスライムに当てるようにするアキちゃん。次の瞬間ひらいた方から凄い衝撃波が襲いかかる!

 スライムは核ごと潰れてオダブツだぁーッ!


 私の隙を見て沼魚人がその鋭い爪で斬りかかってくる!


「ってー、残金をマジックコートに充てよう。とりあえずおまえは10ミリフルオートピストルで!」


 ババババ!


 狙うを使われて頭に銃弾が揃って入った沼魚人は、頭が吹き飛び前のめりに倒れてオダブツだぁーッ!


「あ! ご主人様毒が!」

「悪食を取って期限切れの毒ポーションを飲む!」


 グビリ!


 にっげえ、まずい!!


 でも毒はとれた!


「よ、よし。なんとかなった。ケア掛けて、魔石だけ取って次へ行こう」


 ドティルティに近づくほど雨がひどくなるので、眠ることは出来ず。夜間も歩き続けることに。


「アキちゃん大丈夫?」

「なんとか」

「あそこにバスの停留所がある。眠れなくても体を乾かそう。冒険者生活魔法に体を乾かすのがあるんだ」

「ふぁい」


 アキちゃんを担ぎ上げ、バスの停留所へ。水が床まで浸水していてたき火は無理だな。やれる資材も無いけど。

 バスを待つ長い椅子にアキちゃんを横たえ、クリーンアップを掛ける。一瞬で綺麗になるアキちゃん。でも体温が下がってる。ヒートアップを連続して掛ける。ゆっくりとだけど体温が戻ってくる。


「ごしゅじんさまありがとうございます。眠い以外は良くなりました」

「街に入っちゃわないとちゃんと寝る場所は無いと思う。私は……大丈夫なんだよね」


 なんでだろう。毎日行っているトレーニングが功を奏したのかな。トレーニング効率Lv5だしな。


「ごしゅじんさまのからだ、ばっきばきですごいんですよ、おきづきでなくて?」

「え、そうなの?」

「ばちこんのお胸にびっくりするほどの細い腰。とんでもなく締まったお尻。うらやまない女性はいませ――」

「ちょちょちょちょ、今までずっとライドを許可してたのー! ああああ2000人に聞かれたぁ!」


 舞飛ぶ投げ銭。沸き起こる羞恥心。みたい! みたい! の大合唱。いや、見せませんよ。ちょっと見せたけど。舞飛ぶ投げ銭。


「今日はここで休憩しよう。明日、期限日に突入するよ」

「はい」


 明日は期限日。絶対たどり着かないと。しかしこの雨、サラマンダーの次はウンディーネですかね。まずは街へ行くけど、アルダスさん達が合流したらバグを取ろう。


 翌日、アキちゃんを背負って走り出す。いそげ、いそげ。

 正午頃に街へ到着。ドティルティはドームに覆われていた。街をガードしているんだな。

 出入りできるところを発見し、そこから街の中へ。先物取引所はどこかな。


「ええ! 6千ドルエンくらいにしかならないのですか!?」

「ああ、今この雨じゃ移動が出来ねえだろ。それじゃどうにもならねえ」


 先物取引所のディーラーがそうしゃべる。


 まじかー。初めての先物投資は失敗に終わったのか。

 ……あー。


「あの、ここの雨が上がったら、ドティルティで、どれくらいまで現物は上がりますかね?」

「3万4万は行くと思うぞ。ここ自体の穀物が不足気味だからな」

「私のこの取引権、時間が過ぎたら現物がレクチの倉庫に置かれるやつですよね」

「えーと、ああ、そうだな。今なら輸送業者雇ってジダンに出した方がいいぞ、ドティルティ産が動かねえから二万くらいまで高騰してるって話だ」



「わかりました。雨を直して現物をここに持ってきます」

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