命を捨ててまで守るものは…ない!!〜明日への生命〜
紅茶時間
序章【誕生】
0-1
天気予報がはずれた。今日1日中、雨模様であったはずの天気が、今やすっかり晴れている。雲は多少あるが、今のところ雨が降ってくる気配はない。
今日のオレの勘は、はずれない。良い方ではずれないのならば、それはそれで良しとする。でも、今日は悪い方の勘がはずれないようだった。
「おい、浅田ぁ!放課後、ちょっと教室に残れよ!これ、命令な!」
昼休みの教室内でニヤニヤ笑いながら突如、その台詞を残して去るガタイがいい男子高校生。周りには4、5人程の付き添いがいつもいる。
そう、オレはこの集団のいじめの餌食となっていた。
きっかけは、彼らにいじめられていたオレの友人を助けたからだ。
別にオレは喧嘩に強くなければ、止める勇気なんてものも元々は無かった。だけど、その時のオレは『助けたい』、そんなヒーロー地味た気持ちで体が頭よりも先に動いていた。
結果、因果応報の如く、彼らのいじめの対象となった。
―元々、いじめられやすい体質だから仕方がないんだけどね…。
諦め気味のオレは「はぁ」と短くため息をついた。
残りの授業も難なく受ける事ができ、約束の時間になっていじめられる…。
それを覚悟してオレは残りの授業を受けたはずなのだが…。
授業中に突如、オレは意識を無くして放課後の時間に目覚めることとなった。
なぜ、意識を無くしたのか?
その間、何をしていたのか。
自分では分からないことだらけだ。
そして、1番分からないことは…。
目の前にありえない光景が広がっていることだった。
曇天の空模様。今にでも強い雨が降りそうな程の悪天候。ビュービューと吹く生暖かい風が窓の開いた教室内へ入り込む。
人気のない放課後の時間。その教室内では鉄臭い匂いが充満していた。
匂いの発生源である1人のガタイがいい男子高校生はうつ伏せ状態で倒れていた。首元からは、朱い血のようなものが流れている。彼の手にはその血でこびりついたカッターのようなものがあった。
ピクリとも動かない彼の先にユラユラと蠢く影。まるで生き物のように動くそれは異質な存在。それの持ち主である1人の気弱な男子高校生は、両膝を抱え込みながら体を縮めて座っている。
寝癖のひどい紺色の髪に正気のない柚葉色の瞳が特徴的である彼は震えていた。それはまるで、何かに怯えているようだった。
「…どう、して…」
―どうしてこうなった?
これはどういうことだ?
何があった?
涙声で言葉を発するが最後まで言えない男子高校生。頭がパニック状態になっている為、今の状況に整理がつかない。
彼は目の前で起きた現実から逃れるようと目を背ける。無駄だと分かっていても彼は見なかったフリをして、その場に留まる。
ポツリポツリと雨が降ってくる。遠くの方では落雷の音がする。と同時に雨は強くなっていく。
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