旧世界より

昔はきっと

“世の中にはいろいろな人がいる”

って発想はあまりなかったことだろう


ただ今は違うのかといえば

どうなんだろう


気を遣わなきゃいけないっていうのが面倒臭いのよね

制限だらけでキリがなくて鬱陶しい


だからその“自由”が原因で

人は死んでしまう


だからそれが少しでも穏やかになることで

救われる人がいる


多様性の実現とは“面倒臭い”こと

だってこれまで使い放題だった言葉や表現が

これからは使い方が難しくなるのだから


これまで傷つけてきた人たちがいるという事実を

省みなければならないのだから


昔はもっとおおらかだった

昔はもっとハードだったけど俺は今も生きている

おおらかだったのかハードだったのか


そのおおらかさは犠牲の上に成り立っていた

文句を抑圧して排除して成り立っていた

今の時代に窮屈さを感じるのは当然だ

一人一人がかけがえのない存在なんだもの


「そんな言い方じゃ伝わらないよ」って

優しいつもりでやっぱりこっちの責任にしてる

冷静沈着でなんていられない

今にも殺されるかもしれないのに


「差別だ人権だうるさいな」って

あなたが差別をするからだろう


「俺は差別主義者などではない

ただ生物学的に、機能的に、歴史的に、伝統的に」

そんな遠回しじゃなくもっとはっきり言えばいい

「お前がいなきゃいい気分になれるのに」って


俺は“入口”にはなれるかもしれない

だけどその先は一人一人が勉強するしかない

でも勉強するのって面倒臭いから

だから差別はたぶんなくならないんだろう、と絶望


それでもやっぱりこのままでいるのは嫌だから


俺が普通に存在する社会になったら

きっと他のどんな人でも

ありとあらゆる人たちが存在できる社会になるだろう

俺が存在できるぐらいなのだから


だから歌ってみよう

なんとかなるって信じてみよう

もしかしたら良い方向へと進めるかもしれない


だから、信じてみよう

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