後宮の月恋歌 ~鷹使い宮女と美貌の皇子の因縁が再び動き出す~
青木桃子
皇家の呪いの章
第1話 動物係の宮女
九龍が描かれた天井画を見つめながら
「どうしてこうなったのか……」
青天の霹靂、寝耳に水、はたまたこれは夢の中なのか。
「いったい何故なぜ、どうしてこうなったか、誰かおしえて~‼」
月鈴はひとり部屋で半泣き状態で叫ぶ。それもそのはず、皇族の住まう鳳凰宮に、一介の宮女である月鈴が、第八皇子の
***
神獣や精霊が身近にいた頃の遥か遠いむかしのお話です。
ここは大陸の
燿国の帝都、
城の外からは屋根しか見えないが、皇家のみ許された黄金色。富と繁栄の象徴、黄金色の瑠璃瓦が朝日を浴びキラキラ輝く。一般庶民は城内へ入ることができないので、後宮で働くことが女子たちの憧れである。
天子(帝)が住まう後宮には妃や侍女、宮女、
***
さかのぼること一年前、
***
「
宮廷内の世話係である
「はい、なんでしょう」
一年がたち、月鈴は十七歳になった。後宮生活もすっかり慣れて、ひとまわり年上の圭樟とも上手くやっていた。階級の低い宮女たちは個室を与えられず大部屋だ。山育ちの月鈴は集団生活が苦手で、ストレスも溜まっていた。月鈴は洗濯と称して気分転換に広い庭で
「やったわね、あなた、大・大・大出世よ」
「へ?」
「今上帝のご子息である第八皇子の
「……」
一瞬、時が止まる。夜伽とは、夜の相手をすることだ。後宮は基本、〈帝の女〉であるが、たまに官吏や皇子に
(わたしが……皇子と?)
月鈴は我に返った。
「……は? いやー何かの間違いじゃないですか。わたしは名門貴族じゃないですよ。そもそも皇子に会ったことないし――。いえ、入宮式のときに、たくさんの皇族の中にいたかなぁ。あと、式典とかで……?」
圭璋は腕を組み呆れる。
「へ? とか、は? とか、やめなさい。そんなことどうでもいいから、早く支度しなさい。これは皇命よ」
「皇命……⁉ う、嘘でしょう~?」
カラーン
月鈴は持っていた桶を落とした。
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