海底の山

朝日乃陽

第1話

アルフレッドは悩んでいた。

いつも見ている山には行けないものと思い込んでいたのだが、どうやら行けるのではないかと。


人類史最悪とされた隕石の衝突、それが引き金となった戦争、蔓延するウイルス。逃げるようにこの海底シェルターを建設したアルゴッド博士達は地球上のヒト科を無選別にここへと移した。上を見上げると無数のイワシの群れや、それを食べようと大きく口を開けているクジラが100年前と変わらず生活している。


あれは正確にいうと山ではないのだろう。

このシェルター人類は山と呼んでいるが。ここで生まれた私は何の疑問を持つことなくあの山には行けないものと思い込んでいた。しかしある朝、山からヒトが浮かんできたのを見てしまったのだ。この好奇心を抑えることができる人間がまだこのシェルターに残っているとは思えない。

「あぁ、これが私の運命なのだ。」

そう言い聞かし、どうにかして山へと侵入する方法を考え続けている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

海底の山 朝日乃陽 @asahinobi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る