きみと僕とキミ。
静沢清司
第1話
きみと僕とキミ。 静沢清司
プロローグ きみと僕──。
僕だって、初恋はする。
中学のころの友達に言われたのだ。「お前はだいぶ冷めてるから、恋とは縁がないだろ」と。いくらなんでもそれは失礼だ、と御子柴は怒ろうと思ったが、「僕だって、初恋はする」と言い返しただけだった。
友人はそれをただの言い訳だと思ったのか、何も気にしなかったが、じつは本当なのである。
好きになったのは、中学二年生のころだったろうか。見た目で惹かれたという、ぱっとしない理由だが。
でも同じクラスで、同じクラス委員になることができた。それはもう舞い上がっていたものだ。
彼女の話し方とか、彼女の仕草とか、色々な部分が見えてくると、御子柴はどうしようもないくらいに──それこそ、この大きな感情をどこにぶつければいいのかわからないぐらいに、好きになってしまった。
そして御子柴は、中学二年のとき。夏祭りに永瀬を誘い、それが終わるころにはもう、御子柴は彼女のことを〝瑠璃〟と呼んでいた。
それから色々なことを話した。
ほんの些細なこと。
数学のこの証明がわからないだとか。ここのカフェいいねとか。このシャーペン大事にするねだとか。志望校一緒にしようねとか。
あとは……もう引っ越しちゃうんだ、寂しくなるねとか。
御子柴春太が高校生になるころにはもう別の土地にいた。
瑠璃とはメッセージを飛ばし合っているけど、時間が経つにつれてその数は少なくなっていった。
それに高校二年生になると、御子柴のスマホは変わっていた。
そしてある日、御子柴は思ったのだ。
もう、僕のそばには、瑠璃と僕をつなぐツールなんてなくなってしまったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます