きみと僕とキミ。

静沢清司

第1話

きみと僕とキミ。  静沢清司



プロローグ きみと僕──。


 僕だって、初恋はする。

 中学のころの友達に言われたのだ。「お前はだいぶ冷めてるから、恋とは縁がないだろ」と。いくらなんでもそれは失礼だ、と御子柴は怒ろうと思ったが、「僕だって、初恋はする」と言い返しただけだった。

 友人はそれをただの言い訳だと思ったのか、何も気にしなかったが、じつは本当なのである。

 御子柴春太みこしばはるたは、永瀬瑠璃ながせるりに恋をしている。

 好きになったのは、中学二年生のころだったろうか。見た目で惹かれたという、ぱっとしない理由だが。

 でも同じクラスで、同じクラス委員になることができた。それはもう舞い上がっていたものだ。

 彼女の話し方とか、彼女の仕草とか、色々な部分が見えてくると、御子柴はどうしようもないくらいに──それこそ、この大きな感情をどこにぶつければいいのかわからないぐらいに、好きになってしまった。

 そして御子柴は、中学二年のとき。夏祭りに永瀬を誘い、それが終わるころにはもう、御子柴は彼女のことを〝瑠璃〟と呼んでいた。

 それから色々なことを話した。

 ほんの些細なこと。

 数学のこの証明がわからないだとか。ここのカフェいいねとか。このシャーペン大事にするねだとか。志望校一緒にしようねとか。

 あとは……もう引っ越しちゃうんだ、寂しくなるねとか。

 御子柴春太が高校生になるころにはもう別の土地にいた。

 瑠璃とはメッセージを飛ばし合っているけど、時間が経つにつれてその数は少なくなっていった。

 それに高校二年生になると、御子柴のスマホは変わっていた。

 そしてある日、御子柴は思ったのだ。

 もう、僕のそばには、瑠璃と僕をつなぐツールなんてなくなってしまったんだ。

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