第2話 はじまりのおわり
祖母が67歳で亡くなった。その後、祖父は20年近く生きた。伴侶を失った男性は早死にすると言うが、祖父へ永く生きたようだ。
最期は施設で迎えたと聞いている。私は東京が故郷に赴き、通夜には参列した。その際、年老いた女性と娘が来ていたが、その際に、親戚が顔を見合わせ、騒然とした場面があった。おそらく、祖父が生前に関係のあった女性であったと思われた。祖父に言われた忠告を改めて説得力が増したことを改めて感じた。
祖父は地元では所謂名士だった。聞けば、当時、カラーテレビを市内で初めて購入したという。近所じゅうから、大勢が自宅に大挙したらしい。また農業に飽き足らず、旅館、新聞配達で商売で財を成したという。
山奥に住む祖父は、村一番のケチ者として有名だった。村人たちは彼の家に立ち寄るのを避け、ケチな物語が伝わっていた。
ある日、私が祖父の家を訪れると、祖父はゴミ袋から取り出したボタンを磨き始めた。不思議そうに尋ねた。「それは古いボタンですか?」
祖父は微笑みながら答えた。「そうだ。これは昔のボタンなんだ。大切なものなんだよ。」
私は不思議に思いながらも、祖父の話を聞いた。祖父は戦争が始まった中、兵士たちにボタンを売って生計を立てていた。その中には特別なボタンもあった。祖父は一つのボタンを取り出し、誇らしげに言った。「これは特別なボタンだ。亡くなった大佐がこれを着用していた。」
私は感心し、祖父の話を聞きながら、ボタンを手伝って磨いた。祖父はケチな一面を持っていたが、その物語は彼が生きた証として心に刻まれていた。
数ヶ月後、町の博物館から特別なボタンの価値が知られ、祖父は相当な財産を手に入れた。そのお金を使い、村のために新しい学校を建て、子供たちに教育の機会を提供した。
祖父の物語は、ケチな一面と同時に、彼の過去の誇りを示すものとなり、今も村人たちは彼を新たな光で見るようになった。
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