第15話 生徒会への勧誘
「生徒会……ですか?」
「そうだ、ぜひ君に入ってもらいたい」
なぜ生徒会が?そもそもそれは入学したての新入生に頼むことなのか?俺はまだこの春蘭高校において右左も分からない若輩者同然なんだけど。
「なぜ、僕なんでしょうか?」
「そうだな……それを説明する前に、まずは我が校の生徒会の存在意義について教えようか」
「存在意義……」
「うむ。君は生徒会が何を目的として活動をしているか分かるかい?」
桐生先輩が問うてくる。それにしてもキザったらしい口調だなこの人。クラスメート達は俺と桐生先輩の会話に聞き入ってるようだ。
生徒会の目的と活動か。こう改めて聞かれると難しいが、確か……。
「生徒たちが学校生活を送る上で生じてくる問題を、改善・解決することでしょうか。生徒会はそういう生徒たちの自治的な組織である。と、僕は記憶しています」
おぉすごいなやっぱりこの体は。前世で生徒手帳で一瞬だけ見たことがある文を極すんなりと記憶していたかのように引き出すことが出来る。世に言われている天才の方達はこういう感覚だったんだろうか。
「……うん、正解だ。素晴らしい。それが主な目的と活動だ。ではもう1つ問題だ。生徒会の存在意義は他にもある。それは我らが春蘭高校の生徒会が男子のみで構成されていることと関係している。何か分かるかい?」
生徒会が男子のみで構成されていることに関係している存在意義か。
うーん……生徒会ならば何かしらのイベントで表舞台に立つことは多いだろう。であるならば、生徒会のメンバーは一般の人々にも多く認知されると考えられる。そして、この世界の現状。男子が極端に少なく、女子は男子に飢えている。ここ迄ピースが揃えば誰でも答えにたどり着ける。そうつまりは、
「宣伝……でしょうか?」
「……ふむ」
「学校の内外問わず幅広く活動することがある生徒会は、学校外の人々にも認知される機会があるはずです。それには当然小、中学生の子供たちやその親も含まれています。そして生徒会は僕らの高校の顔とも言えます。その生徒会が、男のみ、それも美形ばかりだとしたら、自然とその高校に興味が湧くのではないでしょうか。そういった意味で、生徒会には来年、再来年さらにその先の、高校の入学者を増やす役割もあると考えられます。そうして、宣伝であると発言させていただきました。いかがですか?」
前原仁の頭脳つええええ!自分でも驚愕しているよ。当たり前のことを言ってるだけなんだけど、この状況でこうも理路整然と言葉を並べられるとは。
「……これも正解。満点の解答と言えよう。うん、やっぱり君はいい。容姿は最高水準、礼儀正しく、何より聡い。そしておそらく性格もいいだろう」
べ、ベタ褒めでさすがに照れてしまうな。恐縮です。ハーレム目指してるくらいなんで性格がいいかはちょっと分かりかねますが。
「そこで、君が生徒会に入会してくれるなら、春蘭高校の広告塔としての役割を果たしてほしいと思っている」
「広告塔ですか?」
「そうだ、生徒会には先ほども言ったように、宣伝としての側面もある。そのため、その生徒会で広告塔を務める者は、圧倒的なカリスマ性を有していなければならない。それこそ、生徒会長と同等か、それ以上の」
「……そこで僕、ですか?」
俺はかなりの評価を頂いているようだ。まぁ自覚はある。自分で言うのもあれだが、俺ほどの優良物件は稀も稀。桐生先輩は、生徒会長としては絶対に見逃せないんだろう。
「うむ。君には俺以上のカリスマ性を感じる。ぜひとも、生徒会に入ってもらいたい」
おお……。これほどのカリスマオーラをほとばしらせている桐生先輩にここまで言ってもらえるとは。こちらからすれば、幸運にも転生に恵まれただけのただのパンピーの俺より、自分が持てるモノで立派に生徒会長を勤め上げている貴方の方が尊敬に値しますけどね。
勿論こんな事は口には出さない。
しかし、生徒会か……別に興味がないわけではないけど……。
「具体的にどういった仕事を充てられるか聞いても?」
俺の反応から脈アリと判断したのか、桐生先輩の目付きに力が入る。
「そんなに難しいことは頼まないつもりだ。主に生徒会が主催するイベントで、司会やスタッフなど、注目される立場の役をやってもらいたいと考えている」
……。
「そうですか、分かりました」
「……生徒会に、入ってくれるかい?」
うーん。周りのクラスメート達は俺がどう返答するか注目しているようだ。桐生先輩も心なしか少し緊張した面持ちをしている。張り詰めた静寂が続く。
本当は今すぐ決めるべきなんだろう。興味もあるしチャレンジしてみたい気持ちもある。ここで了承する事は簡単だ。しかしまだ部活も決めていないのだ。生徒会と部活を両立できるか分からない。
……んー、ここはそうだな。
「すみません、返事はもう少し待ってもらっていいですか?」
これが無難。逃げたようで申し訳ないが、まだ決心がつかないのも事実。少し待ってもらおう。
「……そうか。俺たち生徒会はいつでも君を歓迎する。良い返事を待っている」
そう言い残して、桐生先輩は教室を出て行った。クラスの空気が弛緩したのが分かる。どうやら皆に気を使わせていたようだ。申し訳ない。
生徒会から加入の勧誘があるとは思わなかったな。学校に来てまだ2日目なんだけど?俺はまだ自分の価値を理解していなかったってことかな。
「お、おい仁どうするんだよ。ちなみに俺は入った方がいいと思うぞ。生徒会からのご指名なんてそうそうないんだ」
聖也が僅かに興奮を携えて助言してくれる。自分の事のように考えてくれるお前は良い奴だよ。
「うーん。そうだね、前向きに考えておくよ」
ごめん聖也。とりあえず曖昧に返事しておいた。
正直決めかねている。今の所は五分五分ってところかな。
さて、予想外の出来事はあったが、当初の予定通り今日の放課後は部活の見学に行ってみようかな。気になっている部もあることだし。
俺は気持ちを切り替え、放課後の時間に想いを馳せるのだった。
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