田原総一朗の異世界召喚

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

第1話

「くっ! このままでは我が国は滅亡してしまいます。こうなったら最後の手段を使うしかありません……」


 そう言って、少女が立ち上がる。

 彼女はこの国の王女。

 魔族との戦乱により国王亡き今、彼女がこの国の実質的なトップだ。


「例の儀式を行います」


「しかし姫様! あれは禁断の技ですぞ!?」


 宰相が慌てて止める。


「分かっています。しかし、このままではこの国は滅びを待つのみ……。例え禁忌を犯したとしてもこの国を救わなければなりません!」


「……承知しました」


「では儀式の準備を進めてください。急いで!」


 少女がそう叫ぶ。

 だが、その時だった。

 ドゴーン!!!

 突如大きな爆発音が響き渡る。


「何事です!?」


「姫様! 何者かが城に攻撃を仕掛けてきました!」


「何ですって!?」


 兵士の言葉を聞いて少女が驚く。


「姫様、ここは危険です。ひとまず城の奥に避難しましょう」


「しかし、儀式が……」


 少女が何かを言いかけた時だった。

 再び爆音と衝撃が城を揺らす。

 そして次の瞬間、壁の一部が吹き飛んだ。


「きゃああぁっ!!」


 その爆風に飛ばされて少女が床に転がった。


「うぅっ……一体何が?」


 起き上がって辺りを見回す少女。

 するとそこには信じられない光景が広がっていた。


「な、なんですかこれは!?」


 そこにいたのは人の形をした巨大な化け物達。

 それはまさに怪物と呼ぶに相応しい姿であった。


「あー、やっと着いたぜ。ここが王城か」


 突然現れた男が言う。

 黒いローブに身を包み、フードで顔を隠している。


「おい、お前ら出てこいよ」


 男の呼びかけに応じてゾロゾロと姿を現す異形の存在。

 それらはどれも人間とはかけ離れた姿をしていた。

 ある者は牛のような角を持ち、またある者はコウモリに似た翼を持っている。


「グフッ、グフフフフ……」


「キィイイッ!」


「な、何だこいつらは!?」


 その姿を見た兵士達の顔色が青ざめる。


「俺は魔王軍の幹部だ。こいつらは俺の部下。邪魔をするなら容赦しねえぜ」


「魔王軍だと!?」


 男の言葉を聞いた兵士が叫んだ。

 魔王軍といえば、まさにこの国が戦争している相手だ。


「さて、それじゃさっさと済ませようかね」


 男はそう言ってニヤリと笑みを浮かべた。


「何をする気だ!」


 宰相が声を上げる。


「決まってるだろう? 王女を誘拐し、公開処刑するのさ」


「何だと!?」


「人間はザコだが、群れて抵抗されると少し面倒だからな。トップを潰すに限るぜ。前の国王のときみたいにな。今度はその娘ってわけだ」


 そう言いながら男は懐に手を入れる。

 そこから取り出したのは禍々しい魔力を放つ鎖だった。


「ひいっ!」


 それを目にした兵士の一人が悲鳴を上げた。


「おや、怖いのか? 安心しろ。王女を公開処刑したら、次はお前たちだ。しっかりと殺してやっからよ。……さて、始めるとするか」


 男がゆっくりと王女に近づく。


「い、いや……」


 恐怖で震える王女。

 だが、そんな彼女の願いも空しく、無情にも男は近づいてくる。

 その時だった。

 ゴゴゴゴゴ!!!

 突然地面が激しく揺れ始めたのだ。


「何だ!?」


 男が驚いて周囲を見回す。

 城全体が大きく振動している上、あちこちから謎の光が湧き出ている。


「うわあっ!!」


「キャアアッ!!」


 城のあちこちから悲鳴が上がる。


「こ、これは……。召喚の儀式が暴走している!?」


 宰相が驚きの声を上げる。


「なんだと!?」


 男もまた動揺を隠せない様子だった。

 だが、すぐにハッとした表情を見せる。


「ちっ! こうなったら王女を確保して、さっさと逃げるぞ! ……ん?」


 男はそこで異変に気付いた。

 城全体に広がっていた光が、収束を始めたのだ

 そして次の瞬間……。


「ふむ?」


 一人の男性が姿を現した。

 年齢は八十歳……、いや、八十八歳ぐらいだろうか。

 白髪の頭髪に、灰色の正装。

 そして、その瞳はまるで老人とは思えないほどに強い輝きを放っていた。


「てめえ……。何者だ!」


 魔王軍の男が問いかけると、男性は答えた。


「状況が飲み込めんが……。名前ぐらいは名乗っておこうか」


 そう言うと、彼は静かに名乗りをあげた。


「田原総一朗というものだ」


これが、彼の異世界ライフの幕開けであった。

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田原総一朗の異世界召喚 猪木洋平@【コミカライズ連載中】 @inoki-yohei

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