創造のはじまり

御法川凩

僕の名前は

僕の名前は・・オーウォン。

あなたの名前はオーウォン。



なんにもない真っ白な世界に二つの目玉がパチクリ開いた。ヌーっと、まるでチョコフォンデュに突っ込んだ苺を取りあげるように、型抜きされたクッキーのように。

その時から、僕は何をすべきか分かっていた。

でも、まずは、何か体を預けられるものが欲しい。見る限り、真っ白な世界しかなくて、これ以外の世界を見たい。何か、見たこともないものを作ろう。

僕は本能で自分のことを知っていた。だから、自分に何が出来るか知っている。

だから、まずは友達が欲しい。友達を作るために、この世界を始めるんだ。

僕が思い浮かべたのは・・すると、燃えるような髪をした天女が現れた。鉄色のサギソウ。まるでそのような大きな羽を背中に生やし、胴より下は竜だった。


「マスター」

彼女は僕にかしづいた。

「君はククルカンだね」

にっこりと頷いて、羽を静かに畳んだ。

「君は金星だ。ごらん」

そう言って指を指した先に朱色の点が輝いていた。

「君は君のやりたいようにやればいい。為すべきことをして。僕はその上を歩こう」


彼女は微笑んで、ふわりと空に一回りして蛇腹をうねらせた。ほどなくして、弧を描くように光の粒が辺り全体に飛び出し始めた。タンポポの綿毛のような粒は盛大に、まるで大きな噴水かのように白い世界に飛んでいって、吐き出したのとともに消え去った。


「ごくろうさま。さてと、次は僕の番」

オーウォンは両手で空を捏ねた。エイッとそれを投げると眼前に大きな塊が現れた。オーウォンの右手とそれはまだモチのように繋がっている。

そして、そのまま押したり引いたり滑らかな動作を繰り返し、塊から形が、そして、とうとう、それは大きな三階建ての円塔になった。円塔からは長方形の建物が張り出して、裏側へと続いていた。

「こんなもんか。じゃあ次は・・」

今度は左手で家の周りに線を引いた。外側へと直線、曲線、波線に。彼の引いていく線の後から彼女は色を入れて、役割と秩序を与え。

瞬く間に百花繚乱に咲き乱れた植物たちは彼の作った暖かな太陽と風にそよいでいく。

湿った風の中からプラチナブロンドの光が輝いて、美しい女性が現れた。

「やあ、ヘルミ。僕を道の先まで連れて行ってくれないかい?」

「ええ、いいわ」


時間をかけて、オーウォンは線を引き続けました。

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創造のはじまり 御法川凩 @6-fabula-9

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