ただただ騎士を目指してただけですよ?~調教師はやはり奴隷を囲う~

紫苑

第1話 ただソレをみつけただけ

 欲しい、私のモノにしたい、

 私が支配したい、私に依存させたい


  私が助けたい


 私の〟ステータス〝は、そんな私の想いを反映しただけなんだろうな。



 ・  ・  ・  ・  ・  ・



 村はずれ、〟アスト森林〝の入り口付近にある一軒家。

 只人ただびとである二人の狩人の間に、私は生まれた。

 狩人の二人は、生まれたばかりの私の魔力にもすぐに気付き、平民には珍しい水属性の魔力に、心底驚き、そして私の誕生を祝福したそうだ。


 私が6歳になった日。

 母は私に簡単な言語と弓を教え始め、父は私に狩人として森に入る心得と弓を教えていた。

 魔法は、魔法は…、その……、ほら、二人とも無属性魔力しか持たないし、感覚で魔法を使う人だったから…ね?

 6歳の子どもに教えられる魔法的知識は、狩人であってもやはり少なかった。


 そして私が7歳半ば頃、あのを拾ったんだ。



 〇  〇  〇  〇  〇  〇



「かあさんたち、きょうはいつかえってくるの?」


 早朝、私はいつものように、かあさんと話をする。

 時間を聞きたいんじゃなくて、忙しいかあさんと話をしたいだけ。


「ん~、ごめんね、今日も帰ってこれないから、明日のお昼くらいになるかも」


「え? きょうあめふるの?」


「ええ、だからもし森の近くに行くなら、午前中、お昼には帰っきといてね」


「ん、わかった」


 残念、今日はせっかく探索気分だったのに………


「あと、森の近くに行くなら、「行ったことない場所には絶対行かないいったことないばしょにはぜったいいかない」」


「いい子ね、そろそろ行ってくるから、ほらお父さん、行きますよ?」


「ふわぁ、あぁ、わかったよ母さん、

 じぁ行ってくる、留守番よろしくな」


「ん、かあさんおこらせないようにがんはってね、とうさん、いってらっしゃい」


 そんな私の言葉に苦笑いして、とうさん達はクーとマー(馬の名前)に乗って村に出かけて行った。



  ・



「よし、ごはんはたべた、ふくもきがえた、かあさんがつくったゆみ、うん、もった」


 私は、とうさんが作った丈夫な服を着て、かあさんが作った訓練用ともごっこ用とも言える弓と矢筒を抱え、森の近くに遊びに出かけた。



  ・



「はぁ、はぁ、ついたぁ」


 ふぅ、まぁ私もかあさん達の子ども、このくらい、余裕の距離だから………(大人徒歩5分程度)


「ん、きゅうけいおわりっ、えっと、スライムは?」


 森の入り口手前、辺りを見渡すと…、ん、薄い青色のスライムが数匹、特に動く動くこともなく転がっている。


「みつけた、よし」


 少し近寄る。

 矢筒から矢を取り出し、子どもの精一杯の力で弓を引く。


「んん~、やッ」


 シュッ、と矢が空を切り、スライムに刺さった。


「ん、やった、あたった」


 そっと射抜いたスライムに近付くと、スライムの皮膚?がゆっくりと溶けて、小さな魔石が見える。

 私はこれが好きだ、綺麗だし、成功した証だから。


「かいしゅう、よし」


 皮の手袋を嵌めている手で、スライム特有の小さくても透き通った魔石を、ゆっくり掴み、腰に下げた袋に入れる。


「もっといっぱい、がんばる」


 とうさんにスライム狩りを習ってから、私はよく森の近付くに通っている。

 入り口付近は、スライム以外の魔物(魔法生物の略)が姿をみせることは殆どなく、安全に弓の練習ができるのだ。


 それに、〟アスト森林〝の中心部は、危険なも魔物の多い。

 とうさん達は狩人故に入り口付近に住んでいるが、他の人達は、もう少し離れた場所に住んでいる。

 まぁ、何が言いたいのかと言うと…、友達がいないのだ、遊び相手がいないため、私は今日も一人でスライムを射る。



  ・



「あっ、あめのにおいだ…、かえらなきゃ」


 気付けばそろそろお昼、雨が降る前にに帰らなきゃいけない。


 急いで荷物をまとめ、矢の回収し忘れがないか確かめる。


「ん? まもの?」


 珍しく外してしまった矢の回収に、少しだけ森の中に入る。

 すると、樹の根本に何かいるのがわかった。

 それでも、逃げようと思わなかったのは、ソレが明らボロボロで、動く事もできないのだと理解できたからだろう。


「ん、だいじょうふ」


 私は、自分を鼓舞してソレに近付く。


 ボロボロで分かりにくかったが、肌に張り付いてしまってはいるが、全身に毛があり、尻尾があった。

 痩せた体に、所々血がついている。


「ッ!?」


 あと少しという距離で、ソレは力なくこちらをみつめた。


 いつか絵でみた犬に似ている。いや、これは………


「…きつね?」


 狐?は反応することなく、ただこちらをみつめるばかり。

 狐?と目が合う。

 赤くない、なら、魔物ではないのだろう。


 でも、そんなことより、その瞳が、あまりにもで、だから、


  あぁ、たすけたいなぁ


 だから私は、ソレに手をのばした。

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